国土交通省の日原洋文建設流通政策審議官(建流審)は12日、全国中小建設業協会の総会で講演し、今後の建設産業政策の課題を説明した。日原建流審は、国交省が実施した低入札価格調査基準の引き上げや設計労務単価の引き上げの効果は「止血」程度に過ぎないと指摘。「根本から体質改善する」ためには、入札や発注の形態、施工体制などを今までと違う新たな仕組みに変えていく必要があると話した。建設業界にも、中長期的に国土を保全管理できるようにする視点から、新たな仕組みの提案を求めた。
日原建流審はまず、建設産業政策の最大の課題として技能労働者が今後10年で約2割減ることを挙げ、このままでは深刻な担い手不足を招き、インフラの安全な維持、災害対応などに支障が生じると説明。設計労務単価を引き上げたことも建設会社のためではなく、担い手確保のためであることを強調した。現場の労働者に賃金が適正に支払われなければ、来年の設計労務単価は再び下がり、建設業が「世の中から批判の対象になる」と語り、労務単価の引き上げに見合った賃金を支払うよう強く訴えた。
さらに、今後の根本的な対応策についても「建設業がどうかではなく、国土をしっかり保全管理していくために仕組みはどうあるべきか考える必要がある」と指摘。「今までの延長線上ではなく、違う仕組み、やり方を提案してほしい」と話した。また、私見と断った上で、検討のポイントとして、行き過ぎた競争を防ぐために価格以外の差をどう表現するかや、工事発注量の変動を安定させる工夫、小さな工事でも利益が出せる発注方法、大手ゼネコンや建設コンサルタントとのアライアンスの組み方―などを挙げた。
ダンピングを防ぐ方策のヒントとしては、震災被災地で導入しているCM方式を紹介。下請け契約と下請けへの支払い額をチェックし元請けに工事代金を支払うため、ダンピングで落札すれば元請けの取り分が減ることになるが、非常に手間がかかるといった問題点もあるとした。
提供:建通新聞社