建設業振興基金(内田俊一理事長)は、建設産業の人材確保・育成の現状と課題をテーマにした報告書(中間報告)をまとめた。中間報告では、建設産業界と教育機関との連携強化、体系的な教育訓練を通じた建設技能労働者・技術者のキャリア形成を図るため、人材確保・育成の「中核的センター機能」を確立すべきと提言。センター機能を担う拠点として富士教育訓練センター(静岡県富士宮市)の機能拡充を図る必要性を訴えた。振興基金では、中核的センター機能の在り方を引き続き検討し、今秋にまとめる最終報告に具体的な方策を盛り込む。
建設業団体、教育機関、建設企業の代表者や、学識経験者を集めた「建設産業人材確保・育成方針策定会議」での議論の成果を中間報告としてまとめた。
中間報告では、建設産業に若年者が入職せず、技術・技能継承の危機を迎えている一方、学校卒業後に安定的な仕事に就けない若年層や早期離職者が多い現状から、学校と社会・産業をつなぐ仕組みを再構築する必要があると指摘。また、OJT中心の技術・技能の継承ができず、経験の浅い若年層の採用を抑制したり、施工現場に建設系学科で学ぶ学生・生徒をインターンシップで受け入れる余力が失われているなどと分析した。
こうした課題から、教育訓練体系の再構築が必要だとし、建設産業と教育機関が一体的に取り組む「中核的センター機能」が求められると提言。センターの機能としては▽技能労働者・技術者に対する体系的な教育訓練▽企業・団体の教育訓練に対する支援・情報提供▽教育機関の実習教育に対する支援・情報提供▽国・地方自治体との総合調整―などを挙げた。
中核的センター機能の拠点機関は、富士教育訓練センターの機能を拡充することで対応。一方、富士教育訓練センターは、築50年超と老朽化が進んでおり、今秋にまとめる最終報告の中で、機能拡充の方向性やハード面での対応についても具体的な方策を盛り込む。
中間報告をまとめるに当たって、振興基金の内田理事長は「建設産業の人材確保・育成は危機的な状況にある一方で、居場所がみつけられず、人生設計を立てられない若者が増えている。これまで地域の雇用を支えてきた建設産業が状況の打開に一役買ってほしい」と話している。
提供:建通新聞社