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2013/05/29

南海トラフ対策WGが最終報告 学校・医療施設の耐浪化など提言

 内閣府の「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ」(主査・河田惠昭東京大学大学院教授)は、南海トラフ巨大地震対策に関する最終報告をまとめた。ことし3月に発表された被害想定を踏まえ、超広域にわたる強い揺れと巨大津波の発生による被害が軽減できるよう、学校や医療施設などの「耐浪化」や建築規制、建築物の耐震化を進めるための環境整備、土砂災害・地盤災害対策などに取り組む方針を示している。
 内閣府の「南海トラフ巨大地震のモデル検討会」が3月にまとめた被害想定によると、南海トラフ巨大地震の発生による被害額は民間・公共部門の合計で最大169兆5000億円と見込まれ、サプライチェーンの寸断などによる経済活動への影響も最大44兆7000億円に及ぶと試算された。
 WGでは、この被害想定を踏まえた対策の方向性として、津波からの人命の確保や被害の絶対量を減らすための事前防災などとした上で、国や地方自治体が講じるべき対策を提言した。
 事前防災に向けては、津波に強い地域構造の構築に向け、発生頻度が高く津波高が低いものを対象に海岸堤防を整備。地震発生時に重要な役割を担う行政関連施設や学校のほか、社会福祉施設や医療施設については、浸水の危険性の低い場所に立地するよう配置を見直すほか、避難路・避難階段の整備などによる「耐浪化」を講じる必要性も指摘した。
 建築物の耐浪化のみでは被害の軽減が困難な地域では、津波防災地域づくり法に基づく津波災害特別警戒区域の指定により、市町村が建築制限を課すことも検討すべきだとしている。
 住宅・建築物の耐震化を促進するための施策としては、耐震診断の義務化や診断結果の公表に取り組む重要性を強調した。国・地方自治体が耐震化に向けた定量的な目標を設定するとともに、特定建築物の所有者情報を把握し、耐震化を指示する必要性も指摘。建替需要が発生しにくい高齢者住宅では、部分的な耐震改修の促進なども有効だとしている。
 地震による土砂災害や地盤災害を防ぐため、国・自治体・民間事業者がライフラインの液状化対策、大規模盛土造成地の危険度評価、宅地耐震化の促進、危険地区の建築物の移転促進などに取り組む必要性も訴えた。

提供;建通新聞社