政府は24日、国土強靭(きょうじん)化政策の方向性を議論する「ナショナル・レジリエンス(減災・防災)懇談会」を開き、各府省が進めている施策の自然災害に対する脆弱(ぜいじゃく)性評価から、対応が十分でない課題=表参照=を整理した。今回明らかになった短期的な課題については、各府省に対して当面の対応を7月末に提出させ、優先順位を付けた上で、2014年度予算の概算要求に反映させる。中長期的な課題については、今秋にも「国土強靭化政策大綱(仮称)」をまとめ、各府省に対して大綱に沿った施策の見直しを求める。
脆弱性評価は、各府省が進めている施策を分野ごとにチェックし、国土の強靭化を確保する際に備えるべき目標への対応が十分でない課題を洗い出した。
14年度概算要求に反映させる短期的な課題のうち、不特定多数が集まる建築物の耐震化については、施設所有者による進捗の違いがあると指摘。災害時の避難所となる学校施設では、天井落下防止対策の加速化や専門的な技術者の育成を図る必要もあるなどとした。
市街地の浸水被害や大規模津波などによる死者の発生を防ぐインフラの整備では、九州豪雨災害で河川堤防が浸透によって決壊したことを例に、堤防の量的整備だけでなく「質的強化」を要請。大都市圏の港湾では、低頻度で発生する津波に対するハード・ソフト施策を総合した防護水準の検討が必要だとした。
ため池やダムなどの防災施設の損壊・機能不全による二次災害の発生に対しては、想定する計画規模に対する対策(耐震化、液状化対策、排水対策、土砂災害防止など)に時間を要し、人的被害が生じることを不安視し、関係府省や地方自治体、施設管理者の連携による対策を求めた。
一方、中長期的な課題としては、建設産業の疲弊により、災害対応空白地帯の発生で、災害応急活動を適切に実施できる建設企業を確保できない恐れを指摘した。南海トラフ巨大地震や首都直下型地震などに応じた耐震基準見直しの必要性と、基準見直しに伴う対応コストの大幅な増加も課題として挙げている。
また、地籍調査が未整備であることが、被災前の緊急輸送路の整備などの防災関連事業の遅れ、被災後の復旧・復興の遅れを引き起こすなどと指摘している。
提供:建通新聞社