国・地方が社会資本の老朽化対策に本腰を入れ始めたことを受け、維持補修分野の技術開発に先行投資する建設企業の割合が高くなっていることが、建設経済研究所が発表した建設経済レポートで明らかになった。全体の4分の3の企業が「維持修繕分野を将来的に拡大する」と回答しており、技術開発への投資にもこの傾向が表れる結果となった。
同研究所は、今後の技術開発の動向について、資本金5000万円以上で経営事項審査を受けた建設企業など765社を対象にアンケート調査を実施。回答企業の規模別の内訳は、中小企業502社、中堅企業229社、大手企業34社。
各企業の受注に維持修繕が占める割合は、土木・建築企業で「30%未満」と回答する企業が半数を超えるなど、現状では維持修繕のウエートは高くないが、専門企業(電気工事や管工事など)では「50%以上」と回答する企業が約3割となり、土木・建築企業を上回った。ただ、土木・建築企業も、維持修繕分野を将来的に拡大する方針を持つ企業が4分の3以上に上っている。
新設から維持補修にシフトする流れは技術開発面にも表れている。研究開発に取り組む企業のうち、土木構造物と建築構造物の工法開発に力を入れるとの回答が多く、工法開発の中でも特に維持補修を挙げる企業の割合が新設と並んで高い。
維持補修の技術開発を伸ばそうという意思のある企業でも、土木企業は設計から参入しようとする割合が低いことが特徴的。土木工事は設計施工を分離して発注する公共事業が大半であることが背景にあるとみられる。
建設経済レポートでは、維持補修など新たな事業展開のために技術開発を行う企業が増加傾向にあることについて「閉塞感のある建設市場で技術を生かした経営戦略が功を奏することができれば、一企業のみならず、わが国の建設技術の発展につながる」と期待している。
提供:建通新聞社