政府は5日、国土強靭(きょうじん)化政策の在り方を有識者が話し合う「ナショナル・レジリエンス(防災・減災)懇談会」の初会合を開いた。会合の冒頭で古屋圭司国土強靭化担当相は「国土強靭化を進めることで、災害発生時に、被害を最小限に食い止め、致命傷を受けず、早期復旧が可能になる」と政策の意義を訴え、具体的な方向性の検討を求めた。政府は、懇談会が5月下旬に「当面の対応」としてまとめる提言を、骨太の方針や2014年度概算要求に反映させる方針だ。
座長を務める内閣官房参与の藤井聡京都大学大学院教授は「首都直下地震と南海トラフ巨大地震を含めた国家的危機を見据えつつ、国土強靭化の確保に向けて何をすべきかを話し合う」と今後の議論のテーマを説明。また「強靭化を見据えた時に初めて、安定的な成長が可能になる」など、経済成長の観点からも国土強靭化が重要だとの認識を示した。
政府の国土強靭化政策については、自民・公明党が近く国会提出する基本法の成立を待ち、本格的に動き出すことになる。併行して議論を進める懇談会では、エネルギー、情報通信、産業構造、金融、住宅・都市、交通・物流などの各分野にわたり、災害などのリスクに対する脆弱(ぜいじゃく)性の評価指針と国土強靭化の基本的な考え方をまとめる。
議論の成果は、防災基本計画や国土形成計画のほか、社会資本整備重点計画やエネルギー基本計画など、分野別計画にも反映される見込みだ。緊急性の高いものについては、5月下旬にまとめる当面の対応に盛り込み、骨太の方針や14年度の概算要求にも盛り込む。
初会合では、内閣官房国土強靭化推進室が、海外の国土強靭化の動きを紹介。英国政府は、07年の洪水被害を受け、重要インフラの洪水対策を盛り込んだ「分野別レジリエンス計画」を策定。米国でも、2月12日に行われたオバマ大統領の一般教書演説で、老朽化したインフラの修繕を優先的に進めるプログラムの提案や、インフラ強化のための官民連携ファンドの設置などの方針が盛り込まれている。
提供:建通新聞社