全日制工業高校の建築系学科を卒業した生徒のうち、建設業への就職率が6割未満にとどまっている―。全国高等学校建築教育連絡協議会がこんな調査結果をまとめ、1日に開いた建設業振興基金の「建設産業人材確保・育成方針策定会議」に報告した。就職先の選定に当たっては、地元志向や技術職志向が強く、社会保険をはじめとした福利厚生が整っている企業を選ぶ傾向があることも分かった。女子生徒の採用を増やすことや、高校への求人を継続して出すことなどが建設業界への要望として挙がったという。
この会議は、建設技術者・技能者の高齢化や若年入職者の減少といった課題を抱える中で、建設産業の人材育成・確保を体系的に進めていくために設置。1日の会合では、工業高校や専門学校、職業訓練専門校など教育機関側から人材確保・育成に向けた取り組みの現状と課題をヒアリングし、それを基に議論を深めた。
この中で、全国高等学校建築教育連絡協議会の小島聡委員は、ことし1月時点での全国建築系学科工業高校の進路状況調査結果(回答95校)を提示。それによると、就職者1975人のうち建設業への就職者は57・5%に当たる1135人だった。
生徒やその親の就職先選定の基本的な姿勢については、▽地元志向が強い▽生徒も親も技能系より技術系の希望が多い▽中小建設会社より、大・中規模の製造業を選ぶ▽休日や給料のことが大きなウエートを占める▽福利厚生(特に保険関係)が保障されている企業を保護者は望んでいる―といった傾向が浮かび上がった。
建設業界に対しては、「女子生徒の採用を検討してほしい」「求人を継続して出してほしい」「就業体系の確立や休養日の保障が必要」「待遇面を少しでも改善してほしい」といった要望が寄せられた。
また、出前講座やインターンシップをめぐっては、「進路決定に直結した出前講座が望ましい」「建設業の仕組みや施工管理の面白さをアピールする講座を望む」と、建設業の魅力を伝えることができる内容を求める声が多かった。一方、「現場の確保が困難といった理由から、現場実習が未実施の状態」「建設系ではインターンシップの受け入れ先が少ない」といった指摘も出た。
こうした意見を踏まえ小島委員は「安全で確実に現場実習できるという利点を考えれば、富士教育訓練センターを活用することが最も効果的」との見解を示した。
提供:建通新聞社