国土交通省が21日に開いた「新事業展開支援セミナー2013」には、「建設企業の連携によるフロンティア事業」で優れた成果を収めた地域建設業の経営者らが全国から集まり、新事業に取り組む上での苦労や、事業展開の方向性を報告した。この中で、地盤改良工法の普及に取り組むエコジオ工法推進連携体の尾鍋哲也氏(尾鍋組・三重県)は、「中小の建設業者が生き残っていくためには、独自の技術によって価格競争から脱却し、利益率を向上させていくことが必要」と訴えた。
フロンティア事業は、新たな市場の開拓とともに、建設業の連携強化や新規雇用の確保に結び付けていこうと国交省が創設。複数の建設業が新たに人材を雇用しながら、成長分野に取り組む事業に国費を助成する仕組みで、計91連携体が採択を受け事業を進めてきた。
今回のセミナーでは、7連携体の事例を発表。このうちエコジオ工法推進連携体の取り組みは、三重大学と共同開発した砕石地盤改良工法の普及を目指して、マニュアル類を整備した上で、施工代理店ネットワークを全国に構築しようというもの。12年11月時点で13社の施工代理店を確保し、関係分野の売り上げは1億7000万円に達した。また、計5人の新規雇用にもつながったという。
尾鍋氏は「公共土木を専業としていたが、公共事業の減少で業績の低迷が続いていたため、民間市場への参入を決めた。土木のノウハウを生かせる唯一の民間市場が地盤改良だった」と新事業に乗り出した背景を説明。「今後は、この工法で売り上げや利益率を高めるとともに、環境負荷が少ない点などをアピールし、企業イメージの向上につなげていきたい」と話した。
また、郡上地域森づくり協議会(岐阜県)の報告は、事業管理者である穂積建設(岐阜県)で新規分野開発主任研究員を務める楢崎達也氏が担当。森林組合がオーナーに森林施業を提案営業する際に使うアプリケーションソフトを開発し、販売促進費などの軽減につなげる取り組みにについて、楢崎氏は「森林施業でも建設業が持つさまざまなノウハウを生かすことができる。ただし、既存の事業者よりも高いレベルでないと認めてもらえないことも事実。今後も新しい取り組みに挑戦していきたい」と強調した。
提供:建通新聞社