国土交通省は、住宅・建築物の耐震化を促進するため、一定の大規模建築物や避難路沿道建築物の耐震診断を義務付ける方針を固めた。病院、百貨店、学校、老人ホームなどのうち、大規模なものは2015年末までに耐震診断の実施を求め、その結果を所管行政庁が公表する。全ての住宅・建築物に対し、耐震診断・改修の努力義務を課すことも視野に入れている。13年通常国会に耐震改修促進法の改正案を提出する考えだ。
耐震改修促進法は阪神・淡路大震災を受けて、既存建物の耐震化を進めようと1995年に施行された。現行法では、多数の者が利用する建築物や危険物の貯蔵場、避難路建築物の所有者に耐震診断・耐震改修の努力義務を課した上で、所管行政庁による指導・助言の対象としている。このうち、不特定多数が利用する建築物や要配慮者が利用する建築物などは、指導・助言より一歩踏み込んだ指示・公表の対象となっている。
これに対し、25日の「社会資本整備審議会建築分科会建築基準制度部会」に国交省が示した骨子案では、全建築物に耐震診断・改修の努力義務を課し、助言・指導の対象とする考え。また、指示・公表の対象に避難路沿道建築物を追加する。
さらに▽不特定かつ多数が利用する建築物(病院・劇場・百貨店など)▽避難確保上特に配慮を要するものが利用する建築物(学校、老人ホームなど)▽一定量以上の危険物を取り扱う貯蔵場、処理場(火薬類・石油類を貯蔵する倉庫など)―のうち大規模な建築物は、耐震診断を15年末までに実施するよう義務付ける。自治体が指定する特に重要な避難路の沿道建築物や防災拠点となる建築物も、自治体が指定する一定期限までに耐震診断を求める。
これら建築物の耐震診断結果は所管行政庁が公表。その結果を基に所管行政庁が耐震改修の指導・助言・指示を行い、指示に従わない場合はその事実を公表する。倒壊などの危険性が高い場合は、建築基準法による改修命令が出る可能性もある。診断義務化の対象は耐震診断の進捗状況などを踏まえ順次拡大していく方針だ。
耐震診断により耐震性を備えていることが判明した建築物や、耐震改修で耐震性が確保できた建築物などを対象とした表示制度も創設する。
提供:建通新聞社