財務省の「財政制度等審議会財政制度分科会」(会長・吉川洋東京大学大学院教授)は、2013年度予算編成の方向性について報告書をまとめた。報告書では、公共事業に関し、新規投資の抑制と既存ストックの有効活用の重要性を強調。防災・減災対策としてのハード対策については「景気対策と混同することがないよう留意が必要」とした上で、将来の維持管理負担を考慮した事業の必要性の精査と重点化を図るよう求めた。
分科会の報告書は、財政健全化と成長分野への予算配分を「車の両輪」であるとしながらも「国債をめぐる状況が安定している今のうちに着実に財政健全化に取り組むべき」と指摘。政府の緊急経済対策についても「財政が厳しい中での異例の大規模な財政出動である以上、その効果は厳しく問われる」とした。
分野別の予算編成の方向性では、公共事業について、少子高齢化と人口減少が見込まれる中で、維持管理に多額の経費が必要であることを踏まえれば「社会資本ストックの大幅な拡大を指向していくことは困難」との見解を示し、既存ストック活用への質的転換を求めた。
社会資本の維持管理・更新に向けては、適切な保守・点検・補修で長期間の使用が可能とする委員意見を盛り込み、長寿命化計画の早期策定を各府省に要請。また、優先度の低いインフラの廃止にも触れる一方で「インフラの廃止が人口減を加速し、縮小均衡に陥ることを留意すべき」との指摘も紹介した。
防災・減災対策の在り方については、発生頻度の高い災害にハード対策を講じる方針を盛り込む反面、頻度の低い最大クラスの災害には、避難体制確保などのソフト対策を組み合わせるべきとした。政府が5年で19兆円とされた復興予算のフレームを13年度予算編成で見直す方針を示したことについては「一般会計の厳しい財源事情を考慮しながら、所要の財源を適切に確保することを期待する」と意見した。
提供:建通新聞社