原告勝訴―。建設現場でアスベスト(石綿)に曝露し、石綿関連疾患にり患したのは「国が使用を禁止させるのが遅すぎたからだ」などとして、東京、埼玉、千葉在住の元建設作業従事者とその遺族計337人が、国と建材メーカー42社に総額約120億円の賠償を求めた「建設アスベスト集団訴訟」の判決が12月5日、東京地裁(始関正光裁判長)で言い渡された。判決は国の責任を一部認め、原告へ約10億6000万円を支払うよう命じた。建設作業従事者の石綿健康被害について、国の責任を認めた判決はこれが初めて。
原告側は「国は石綿粉じんの発がん性が明らかになっていたにもかかわらず、旧労働基準法や労働安全衛生法に基づく規制権限を行使しなかった。遅くとも1987年には石綿建材を禁止するべきだった」などとして、国が判断の誤りを認め、損害賠償に応じるよう求めていた。
これに対し、国側は「戦前から石綿についても粉じんの一つとしてその衛生上の有害性を認識し、その時々の医学的知見、工学的知見に応じ、使用者に一定の義務を課すなどの措置を講じ、適時、措置を強化してきた」とし、「危険性が明確になったのは2000年代前半であり、06年に全面禁止したのは適切だった」と反論していた。
判決は、建材メーカー42社の責任は認めなかった。
建設作業従事者の石綿健康被害をめぐっては、札幌や大阪など6地裁で係争中。訴訟の争点が今回とほぼ同様の横浜アスベスト訴訟は、2012年5月25日に原告側の請求は全面棄却されており、原告側は東京高等裁判所に控訴している。
提供:建通新聞社