自民党の国土強靭化総合調査会(二階俊博会長)は21日、南海トラフ巨大地震の被害想定や対応策をめぐり、東京大学名誉教授の阿部勝征氏からヒアリングした。この中で阿部氏は「南海トラフ巨大地震の津波高は最大で30bを超え、到達時間も東日本大震災より短い。人的被害は32万人を超え、まさに国難となる」と指摘。その上で「こうした被害をできる限り抑えるため、建物の耐震化やインフラの増強、高台移転などに取り組んでほしい」と訴えた。
中央防災会議委員を務める阿部氏は、南海トラフ巨大地震の被害想定について、人的被害が32万3000人、全壊建物数が238万2000棟となっていることを説明。経済的被害は「阪神淡路大震災が10兆円、東日本が16兆円〜25兆円の経済的被害を受けた。南海トラフ巨大地震での被害は、数百兆円規模になることは間違いない。現在、計算を進めているところで、詳細は年明けにも公表できるだろう」との見方を示した。
今後の地震対策の在り方について、阿部氏は「被害は努力によって減らすことができる。例えば、建物の耐震化率を現状の79%から90%に高めれば、建物倒壊による死者の数を3万8000人から2万1000人へとほぼ半減させることが可能だ。津波も早期避難や津波避難ビルの活用によって被害がずっと少なくなる」と述べ、早急な対策の必要性を強調した。
提供:建通新聞社