国土交通省は、東日本大震災の復旧・復興工事から不良不適格業者や暴力団を排除するため、被災3県(岩手・宮城・福島)で大臣許可業者に対する立ち入り検査を強化することを決めた。被災3県に営業所を新設した業者や新たに入札参加登録した業者、復旧・復興工事を受注した業者などの中から70社程度を抽出し、11月下旬から営業所単位での検査を始める考え。また、元請け・下請け間の適正な契約や、施工体制・労働安全衛生の確保、暴力団の排除などを訴えるリーフレットの配布などを通じて、法令順守に向けた取り組みを徹底していく方針だ。
復旧・復興事業が本格化し、被災地の建設市場が急激に拡大する中で、他地域の建設業者が新たに営業所を設け、新規参入するケースが増えている。国交省のまとめによると、2011年4月から12年8月までの間に、大臣許可業者が被災3県に新設した営業所の数は368カ所に上る。
他方、被災地では下請けへのしわ寄せに関連した相談件数や工事現場の労働災害が増加傾向にある。例えば、12年1月から10月末現在の建設業労働災害は、被災3県合計で前年同期に比べ19%増えた。建設業の契約に関する事件や暴力団が加入した事件も発生している。国交省は今後さらに復興需要が増えれば、こうした問題が深刻化しかねないとみて、厚生労働省や警察庁、被災3県といった関係機関と連携して対策を講じることにした。
立ち入り検査に当たっては、検査対象営業所の本店が所在する地方整備局などからも検査官を派遣し、被災3県と連携しながら実施する。国交省によると、「直接の処分権限を持つ許可部局(各地方整備局など)の検査員が自ら検査することで、検査の実効性を確保する」ことが狙いだ。
検査対象は▽東北地方整備局(東北地整)や被災3県で新規許可を取得、または許可換えを行った業者▽被災3県に新たに営業所を新設・移設した業者▽被災3県に新たに入札参加登録をした業者▽東北地整や被災3県が発注した復旧・復興工事を受注した業者―などの中から70業者程度を選定。請負契約や下請け代金の支払い、下請けへのしわ寄せの有無、営業所専任技術者・施工現場技術者の適正配置、施工体制台帳の整備などを調べる。
法令順守の徹底に向けたリーフレットは、被災3県や管内の建設業団体、労働基準監督署、労働局、建築確認の特定行政庁、指定確認検査機関、市町村などに配布する。内容は▽請負契約ルールの啓発▽営業所・工事の施工現場に関するルールの啓発▽施工現場の安全衛生管理、偽装請負排除の啓発▽暴力団の排除―などで構成している。
提供:建通新聞社