国土交通省の佐藤直良事務次官は建設専門紙記者会との懇談で、地域建設業の役割について「2011年3月11日に発生た東日本大震災では、建設業が地域のために真っ先に駆け付けて、道路啓開などに尽力してくれた。水害対応や火山灰の処理、鳥インフルエンザ対策など、地域を守った事例は枚挙にいとまがない。単に工事を請け負うだけにとどまらない、地域に不可欠の存在だ」と強調した。その上で「平常時はいいものを適正な価格でタイムリーに提供しながら、そこで培った知見を生かして非常時にも地域の担い手としての役割を果たしてほしい」と期待感を示した。
公共投資の在り方をめぐっては、「大震災によって、国民の安全・安心への信頼は相当揺らいだ。国民の命を守るという最低限の備えは早急に進めなければならない」と述べた上で、「いつ首都直下地震、南海トラフ巨大地震が起こるか分からない。被災地の復旧・復興にはしっかり取り組みつつ、日本全体としての備えの必要性を訴えていきたい」と、全国での防災対策に力を注ぐ姿勢を明確化した。
社会資本整備の方向性について佐藤事務次官は、「国民の命を守ることに加え、日本が持続的に発展する基盤づくりも欠かせない。国際競争力の強化に向けた空港・港湾・鉄道の整備などが求められる」と指摘。また、「私たちが安全で快適な生活を送ることができるのは、先人が貧しい時代の中で社会資本を整備してくれたおかげだ。今後も、社会資本の機能が十分に発現できるよう、より良い状態にして孫子の時代に引き継いでいく使命がある」と話した。
建設産業の将来像をめぐっては「若手の入職者が減少していることが最大の問題だ。なぜ入職者が減っているのかを分析した上で、行政と業界が一体となって取り組んでいく必要がある」との認識を提示。さらに問題解決に糸口となるキーワードとして建設業の産業化≠挙げ、「国交省所管の他産業から、優れた部分を学び吸収していく方法を考えていきたい」と述べた。
提供:建通新聞社