建設企業の約4割が技術の研究開発に取り組み、このうちの約7割は、5年前と比較して研究開発費を現状維持以上に保っていることが、建設経済研究所のアンケート調査で分かった。企業規模別では、大手よりも中堅・中小建設業の方が研究開発費を増加させている割合が高かった。技術開発の重点分野としては、大手の半数以上が耐震補強・液状化対策を挙げ、中小・中堅は施工管理に関する技術開発を重視していた。こうした結果について同研究所は、「厳しい経営環境の中で、現場で利益を生み出すことで生き残りの道を模索しようとしているのではないか」とみている。
「建設企業の技術経営」に関する調査結果は、23日に同研究所が発表した建設経済レポートに盛り込まれた。調査はことし6月から8月にかけて、資本金5000万円以上の経審受審企業3000社を抽出して実施。25・5%に当たる765社から回答を得た。
それによると、技術開発を実施している企業の割合は38・3%。企業規模別では、大手(資本金10億円以上)が85・3%、中堅(1億円以上10億円未満)が46・7%、中小(1億円未満)が31・3%だった。研究開発費の推移を見ると、全体では5年前との比較で「概ね横ばい」が51%と過半数を占め、「増加」と「減少」が14%、「大幅に減少」が7%、「大幅に増加」が4%など。「大幅に増加」「増加」を合わせた数値を企業規模別に比較すると、大手が11%、中堅が16%、中小が20%と、規模が小さいほど増加割合が高いという実態が浮かび上がった。
今後の技術開発の方向性をめぐっては、既に技術開発を実施している企業と合わせ63・5%が「技術開発を進める」と回答。技術開発の重点分野としては、複数回答で「施工管理」が最多の39%を占め、「工法(土木構造物の維持補修」(28%)や、「工法(建築物の維持補修」「耐震補強・液状化対策」(ともに26%)なども多かった。大手は「耐震補強・液状対策」、中堅・中小は「施工管理」がそれぞれ高い割合を占めた。
建設分野以外での重点分野も尋ねたところ、複数回答で「太陽光発電」が48%と最も多く、「その他環境分野」「農林水産分野」などの回答も目立った。企業規模別で見ると、大手は「放射性廃棄物の処理」「土壌浄化」といった震災対応技術を重視する傾向が強く、中小は「太陽光発電」や「農林水産分野」に関心を寄せていた。
特許保有状況については、全体で「特許を保有」が26・3%。企業規模が大きいほど、特許保有の割合が高かった。
提供:建通新聞社