国土交通省と日本下水道協会は16日、「水環境マネジメント検討会」の初会合を開き、今後の下水道管理の在り方に関する検討に着手した。下水の高度処理や再利用、下水道施設の省エネルギー対策などの方向性を明確化するとともに、下水道整備の基本となる流域別下水道整備総合計画(流総計画)の見直しも視野に入れている。2012年度中に一定の検討成果をまとめる方針だ。
この検討会は、人口減少や地球温暖化、財政ひっ迫など社会情勢が大きく変化する中で、下水道が果たすべき役割を再検証し、効果的・能動的な下水道管理の在り方を探るために設置された。
国交省水管理・国土保全局下水道部の岡久宏史部長は冒頭、「水環境を取り巻くさまざまな課題に対応するため、受け身ではない能動的な方向性を打ち出してほしい」と要請。委員長に就任した田中宏明京都大学大学院教授は、「これまでの流総計画は、下水道をつくるための計画≠セったが、今後はどのように使うのかに着目した計画が求められている」との認識を示した。
初会合では、事務局が水環境をめぐる論点として、@全国で画一的でない高度処理の推進A下水道以外の負荷が大きい水域への対応B放流先の状況に応じた下水道の能動的管理C事業の優先度に配慮した現実的で柔軟な計画づくりD流域全体での資源・エネルギーの最適管理―の5点を提示した。
このうち、高度処理の推進に向けては、三大都市圏など重要水域の高度処理は国家的なプロジェクトに位置付けて重点化する必要性を指摘。同一湾内で水環境の違いが顕著になっている状況を踏まえ、流域一律ではなく水利用などの重要な水域を優先できるよう順位付けの検討も求めた。流域全体で放流先の影響を勘案しつつ、季節別・地先別での処理推進管理を行うことも必要とした。
流総計画をめぐっては、策定までに相当期間を要し、人口減少下では将来フレーム予測自体が難しいことを踏まえ、策定期間や見直し間隔を短縮するといった機動的な対応を進めていくべきとの考え方を示した。
提供:建通新聞社