文部科学省は、今後の学校施設の再生整備の在り方について示した「学校施設老朽化対策ビジョン(仮称)」の中間報告案をまとめ、23日に開いた有識者会議の「老朽化対策検討特別部会」に提示した。中間報告案では、今後30年で38兆円と推計される老朽化対策の事業費が、予防保全型を取り入れることで30兆円まで圧縮できると提言。地方自治体の老朽化対策が改築から長寿命化を目的とする改修に転換されるよう、国の補助メニュー改善などの必要性を訴えている。
中間報告案では、全自治体が築50年で改築、築25年で改修といった従来型の対策を講じると仮定した場合、今後30年の老朽化対策費を38兆円(年平均約1兆3000億円)と試算。しかし、改築時期を築75年とするなど、これまで改築していた施設を長寿命化を目的とした改修へと転換すれば、約30兆円(年平均1兆円)にコストを抑えることができると推計した。
こうした推計を踏まえ、自治体に対しては、建物の償却年限や改修履歴、劣化状況などを把握して中長期的な整備計画を策定することを求める。目標耐用年数の設定など各施設の整備時期を明確にして長寿命化に取り組むとともに、他用途の公共施設との複合化や不要となった施設の一部を取り壊す「減築」の必要性も示した。
また中間報告案では、長寿命化を推進する自治体への国の支援策の充実も提言。長寿命化への転換が円滑に進められるよう、国に対して▽工期短縮の具体的手法や改築・改修時期の目安などを整理した手引き▽先導事例に対する支援策▽ライフサイクルコストを簡易に計算できるツールの開発▽補助メニューの改善―などを求めた。
このほか、こうした取り組みを実際に進める教育委員会に技術職員が1人もいない自治体が全体の半数に上ることを問題視し、国が技術面でのサポート体制を構築することも提言。児童・生徒の減少に合わせた基準面積見直しについても言及した。
提供:建通新聞社