政府・中央防災会議の防災対策推進検討会議が設置したワーキンググループは、南海トラフ巨大地震対策の中間報告をまとめた。津波被害を最小化するため、リアス式海岸部で重要施設の高台移転・高層化や高台への避難地整備、平野部で盛土構造の道路を活用した非浸水地域の確保や津波避難ビルの指定など、地域特性に応じた予防対策を講じるよう提言した。2012年度予算などに計上された全国防災対策費の継続による財源確保、対策を担保する特別法制定の必要性も訴えた。
中間報告は、3月に公表された南海トラフ巨大地震による最大クラスの地震・津波想定に対し、津波対策を中心に当面取り組むべき対策をまとめたもの。
この中では、地域の地形や津波浸水想定、津波到達時間などを踏まえた対策を講じるよう言及。リアス式海岸部では、津波が集中して津波高が大きくなることから、発生頻度が高く津波高が比較的低い「レベル1」の津波に対し、海岸堤防や海岸防災林、高台に避難地や避難路・避難階段などを整備するよう求めた。災害時に重要な役割を担う行政関連施設や学校、高齢者が入居する社会福祉施設は、高台への移転や建物の高層化を検討課題に挙げた。
一方、平野部では、高台が少ないことが想定されるため、盛土構造の道路を活用した非浸水地域の確保、迅速な避難を可能にする直線的な避難路の整備などを提案。行政関連施設の移転・高層化に加え、既存建物を津波避難ビルに積極的に指定することも重要な視点とした。社会福祉施設は、移転や土地の嵩上げなども必要としている。
こうした対策を促進するための財源として、11年度第3次補正予算と12年度当初予算で約1兆円を確保した全国防災対策費を13年度以降も継続させることを要求。対策を実施する際の法的枠組みを整えるため、特別法の制定に向けた検討に入ることも求めた。
WTでは、8月末に発表する被害想定も踏まえ、今冬に対策の全体像をまとめる予定。
提供:建通新聞社