政府は6日、2011年度国土交通白書を閣議了解した。東日本大震災が被災地や日本全体に与えた影響をさまざまなデータで示すとともに、復興に向けた国交省の取り組みなどを解説。震災による東北圏の域内総生産減少額が約1兆4000億円だったとの推計を盛り込んだ。復興に当たり、国交省が持つ現場力、統合力、即応力を最大限に発揮していく姿勢もあらためて明確化した。
「震災からの復興と国土交通行政の転換」をメーンテーマに据えた今回の白書は、震災復興が「人口減少、高齢社会、財政制約、エネルギー制約、さらには自然災害リスクの中で、いかに持続可能で活力ある国土・地域づくりを全国に進めるかの試金石となる」との認識を提示した。
白書では、震災で資本所得が減少したことによる波及的な影響を地域別に算定した。それによると、域内総生産は岩手県が年間4000億円の減少、宮城県が7600億円の減少、福島県が3800億円の減少となり、これらを合わせた東北圏では1兆4000億円の減少と試算。ただし、この中には復興関連事業や原発事故、震災後の経済変化などの影響は含まれていない。
復興に向けた取り組みのうち、復興まちづくりについては3月1日現在、被災3県合計で土地区画整理が総面積約2800fで計画されており、これは阪神・淡路大震災の実績と比べると10倍以上の規模となる。また、防災集団移転事業の対象戸数は、過去の事業累計の12倍以上に当たる約2万3300戸に達するという。
一方、復興の課題としては▽防災集団移転への地元合意、跡地利用(移転先と被災地の土地価格の相違など)▽復興事業の人材不足▽海岸堤防の高さ(安全の要請と景観・観光振興への配慮の調整)▽原発事故問題を抱えた福島の復興・再生―などを挙げた。
大震災を踏まえた国土交通行政の転換にも触れた。具体的には、減災の考え方に基づき、ハード・ソフトを組み合わせた多重防御の思想を組み込んだ津波防災地域づくり法の制定や、交通ネットワークの多重性(リダンダンシー)を確保するための全国ミッシングリンクの整備、東京圏の中枢機能のバックアップ手法の検討、エネルギー制約に対応するための低炭素まちづくり、再生可能エネルギー活用の推進などを盛り込んだ。
提供:建通新聞社