国土交通省の「首都高速の再生に関する有識者会議」(三宅久之座長)は23日の会合で、首都高速再生基本戦略の策定に向けた論点を整理した。首都高速の地下化をめぐっては、環境改善や耐震性の向上、上部空間の立体的・複合的な利用の可能性といったメリットがある一方、地上部との接続に大規模な工事が必要となり事業調整に時間がかかる点や建設費が高くなる点などが課題として挙がった。今後も月1回程度のペースで議論を進め、今夏までに基本戦略の策定を目指す。
この会議は、首都高速の地下化や線形変更などの可能性を含めた再生手法を長期的な視点から話し合うため、本年4月に設置された。5月には山手トンネルと高速3号渋谷線をつなぐ大橋ジャンクションや、都心環状線の築地川掘割部などを委員が現地視察した。
今回の会合では、事務局側がこれまで寄せられた委員からの意見を踏まえ▽路線の集中、急カーブの多さなどにより慢性的な交通渋滞が発生し、安全な高速走行にも支障がある▽老朽化が進み、老朽構造物が直下型地震に対応していない▽景観や沿道の住環境に悪影響がある―ことなどを、首都高速が抱える課題として整理。その上で「単なる高齢化した首都高速の更新にとどまらない、首都東京にふさわしい首都高速の再生が必要」との基本理念を示した。
具体的な再生手法の一つと見込まれる地下化については、主なメリット・デメリットを提示。課題への対応策として、地上部との接続箇所を少なくすることや、都心への交通流入を極力抑えることなどを提起した。都市再生との連携に当たっては、立体道路制度の改良などの制度改正や、資金面での支援措置も必要とした。
提供:建通新聞社