東日本大震災が不動産の開発・再生に影響を与えたと考えている不動産会社は全体の約6割に達することが、国土交通省の調べで分かった。具体的には「耐震・免震・制震性能」「節電・省エネ性能」「地盤の強度、土壌の質」を重視する方向で大きな意識変化があったという。今後、不動産ファンドビジネスを「拡大する」意向がある不動産会社は約半数を占めた。
この調査は、不動産投資市場の活性化に向けた方策を検討するため、売上高10億円以上または資本金1億円以上の不動産会社や、不動産証券化を実施するアセットマネジメント会社、金融機関などを対象として、2012年3月に実施した。回答企業は不動産関係58社、金融関係74社だった。
不動産会社に不動産ファンドビジネスへの取り組み意向を尋ねたところ、48%が「拡大する」と回答。その理由としては「安定的な収益確保が見込めるから」「市場回復や市場拡大が見込めるから」が目立った。一方、不動産ファンドビジネスに消極的な理由については「証券化の知識やノウハウを持った人材が不足しているから」「証券化するコストや事務処理が負担だから」が多かった。
東日本大震災の影響をめぐっては、「影響を与えた」が13%、「やや影響を与えた」が45%だった。開発・再生するエリアや用途、投資規模については現状維持が大半を占めたものの、立地・建物性能に対する意識の変化が大きかった。
老朽化・遊休化している不動産の開発・再生については、約8割が「積極的に取り組む」「ある程度取り組む」と前向きな姿勢を示した。
不動産証券化手法を活用する理由については、「自社単独では取り組みにくい事業に取り組める」「機関投資家の出融資が期待できる」などが多く、幅広い投資家を確保できる点にメリットを感じていることが分かった。一方、活用しない理由としては「事務手続きの負担や証券化コストが大きい」「開発・再生に適した証券化スキームがない」といった回答が多かった。
証券化手法を活用した不動産の開発・再生の拡大に必要な取り組みを尋ねたところ、「税制上の特例措置」「制度・運用面での規制緩和」を求める声が目立った。金融機関向けのアンケートでは、こうした取り組みに加え、「事業リスクの明確化や情報整備」の必要性を訴える意見が多かった。
提供:建通新聞社