厚生労働省は、建築物などの解体作業に従事する労働者の石綿ばく露を防止するための技術指針を作成、公表した。労働安全衛生法の石綿障害予防規則(石綿則)に規定する石綿含有建材の除去などについて留意事項を規定した。石綿含有成形板などを除去する際には、やむを得ない場合を除き、破砕せずに除去する―などとした。
指針は、石綿則第3条第1項が規定している事前調査の重要性に着目。調査の精度を向上させるための手順と、その手法について示した。
発注者が設計図書や過去の石綿に関する調査記録などを有する場合は、解体工事の請負人にこれらの情報を通知するよう規定。その上で、事前調査は「石綿に関し一定の知見を有し、的確な判断ができる者が行うこと」とした。
また、建築物は部位や使用目的によって使用される建材が一様ではないと指摘し、使用されている建材の使用箇所、種類などについて網羅的に把握するよう指示。石綿含有の有無を調べる分析についても「十分な経験と必要な能力を有する者」が行うよう求めた。
一方、石綿ばく露防止対策を徹底していく上で懸案の一つとなっている「漏えいの監視」の在り方については、スモークテスターに加え、「粉じん相対濃度計(デジタル粉じん計)または繊維状粒子自動測定機(リアルタイムモニター)の使用が望ましい」と明記。これらの機器の導入の効果や活用方法などについて学識者や実務者の意見が大きく分かれているにも関わらず、一歩踏み込んだ認識を示した。
このほか、東日本大震災で被災した建築物などの解体工事やがれき処理における労働者の石綿ばく露も懸念されていることから、呼吸器用保護具の選定についても規定。隔離空間の外部で石綿の除去などの作業を行う際のマスクは、電動ファン付き呼吸用保護具または取り替え式防じんマスク(RS3、RL3)に限定する一方、石綿含有建材などの切断を伴わない作業では、取り替え式マスク(RS2、RL2)の使用を認めた。
提供:建通新聞社