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2012/05/01

「保険未加入対策と公契約導入を」 RICEが提言

 建設技能労働者の労働環境改善には、社会保険未加入企業の排除だけでなく、公契約の導入も同時に実施することが効果的―。建設経済研究所(RICE)がこんな提言を盛り込んだリポートをまとめた。これらの施策を実現するため、建設技能労働者の就労実績や経歴・資格などを一元的に管理する「就労履歴管理システム」の可能性に着目し、その活用拡大に向けて国からの十分な予算措置が必要と指摘した。
 「雇用と賃金の動向に対応した労働環境改善の取り組み」をテーマにしたリポートでは、建設技能労働者の労働環境改善に向けた動きとして、▽建設業の社会保険未加入対策▽基幹技能者の評価と活用▽地方自治体による公契約条例の制定▽就労履歴管理システムの活用―などを取り上げ、その現状と今後の展望を示した。
 社会保険未加入対策をめぐっては、5年後をめどに加入率を企業単位(許可業者)で100%、個人単位で製造業並みに引き上げる目標の実現に向けて、建設業許可・更新時の確認強化・指導や、元請けによる下請けの保険加入指導の徹底などに関係者が一体で取り組むこととされている。リポートはこうした動向を詳しく解説した上で、業界団体からの「倒産の増加」を懸念する声や、「下請けや労働者に対するしわ寄せを防ぐため、法定福利費の別枠支給」を求める意見も盛り込んだ。
 専門工事の職種ごとにマネジメント能力に優れた熟練技能者を認定する基幹技能者制度については、2012年1月時点で28業種36団体が運用しており、登録者数は3万2612人に上っている。地方自治体で基幹技能者への加点評価などの試みが広がる一方、基幹技能者に対する手当の支給といった待遇改善の取り組みは一部のゼネコンにとどまっている。このため、業界の意見を踏まえた制度改善の必要性に言及した。
 公共工事や業務委託の契約に際し、労働者の賃金をはじめとした労働条件の最低基準を定める公契約条例は、野田市(千葉県)や川崎市(神奈川県)などが制定している。両市に実施したヒアリングでは、清掃業務の従事者から「助かっている」といった反応が得られる一方、▽適用する自治体・件数が増加した場合の行政・企業の負担▽一人親方を適用対象とした場合の賃金把握▽労働者に支払う賃金を明らかにすることへの抵抗―などが課題として挙がったという。
 就労履歴管理システムは、就労履歴カードで建設作業員の入退場履歴などを収集し、インターネットで一元的に管理する仕組み。リポートでは、社会保険未加入対策や公契約条例の実効性を確保する上で、同システムの機能を拡大して活用することが効果的と指摘した。機能拡大などに必要な費用負担をめぐっては国による予算措置などの支援を求めた。

提供:建通新聞社