12年度の建設投資額(名目値)は、震災復興予算の執行が本格化することに加え、民間建設投資も緩やかに回復するため、前年度に比べ4・9%増の44兆4700億円になる―。建設経済研究所と経済調査会は、こうした予測を盛り込んだ4月時点での建設投資見通しをまとめた。政府建設投資額を積み増した影響などで、前回1月時点の予測と比べ3600億円の上方修正となった。ただし、建設経済研究所では「欧州債務危機などの海外経済動向や原油価格上昇、電力料金上昇」を懸念材料として挙げ、年度後半に息切れする可能性も指摘している。
12年度の政府建設投資は、5・8%増の17兆7900億円と予測。東日本大震災復興交付金や東日本大震災復興特別会計を含んだ国の当初予算の公共事業関係費の伸び率が8%増、地方単独事業費の伸び率が1・5%増と仮定した上で、11年度からの繰り越し分を加えた。11年度補正予算の政府建設投資や11年度当初予算の執行留保解除分は大半の執行が12年度にずれ込むとみている。
政府は震災後の当初5年間で少なくとも19兆円の復旧・復興対策経費が必要と試算しているが、12年度当初予算までに計上された関係予算を合わせると既に約18兆円に達する。こうした状況について建設経済研究所では「これまでの予算では手当てすることができていない震災関連予算もあると考える。被災地の復旧・復興を円滑に実施するためには、事業の迅速・適切な執行に加え、今後の十分な事業費の確保が求められる」と、追加的な予算措置の必要性にも言及している。
12年度の民間住宅投資は4・4%増の13兆5600億円。復興需要に加え、将来の消費税率変更を見据えた住宅取得意欲の高まりなどが押し上げ要因となり、住宅着工戸数が4・5%増の88万3200戸に回復するとした。
12年度の民間非住宅建設投資は、11年10月〜12月期の実質民間企業設備が前年同期比で4・6%増と大幅な増加に転じ、先行指標である機械受注統計なども堅調に推移していることから、4・4%増の13兆1200億円へと回復する見通し。着工床面積別では、倉庫の伸びが6・6%増と大きくなるとした。
「建設経済モデルによる建設投資の見通し」は、建設経済研究所と経済調査会が四半期ごとに公表している。
提供:建通新聞社