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2012/04/17

佐藤技監「地域のホームドクターを目指せ

 東日本大震災では、自衛隊や警察の活躍が注目されたが、その裏で人命救助や支援物資の搬入を可能とするため、いち早く応急対応に乗り出したのは地域建設業だった。口蹄疫の患畜処理や新燃岳噴火への対応など地震以外の非常時にも、地域建設業は存在感を示してきた。ただ、社会からは建設業の役割が十分に認識されていない現実がある。こうした中で、地域建設業の取り組みは今後どうあるべきか。建設専門紙の共同インタビューで国土交通省の佐藤直良技監に話を聞いた。(文・構成は東京・報道部=高橋量太)
 ―日本の災害対応の現状をどうとらえていますか。
 「日本の国土は自然条件、地形・地質、気候が千差万別であり、世界でも有数の厳しい環境にある。これまで先人たちが災害との戦いを克服して、いまの日本があることを忘れてはならない」
 「こうした自然環境の中で、災害対応を網羅的に一つの主体が担うことは難しい。全体の責任は国が持つべきだが、各地域では地方自治体が主体となる。そして、災害に対し実際の力を備えているのは、日ごろの仕事を通じて地域のさまざまな条件を熟知している地域の建設業だ」
 ―地域建設業には、どんな役割が期待されますか。
 「例えば、建設業が道路を施工すれば、この辺りの地質が軟弱であるとか、雪国ならどの辺が吹き溜まりになりやすいとか、さまざまな知見が有形・無形で残っているはず。それを防災力向上に生かしてほしい。また、災害が起こる前に、防災に関する情報を地域住民と共有する試みも考えられる。そして、災害発生時には地域の応急対応を担うことが欠かせない。いわば地域のホームドクター≠務めることを期待したい」
 ―重要な役割を担うにもかかわらず、建設業に対する社会のイメージは決して良いものとはいえません。
 「自分たちの役割を社会にしっかりと認識してもらう取り組みが必要だ。例えば、本年度に北海道の留萌で防災運動会が開かれる。地域住民と防災関係者が一体となって、災害対応の在り方を学ぶ場となる。例えば、毛布を簡易担架にして、安全に救護者を搬送するリレーや大声競争、バケツリレー、土のう積みリレーなどで競い合う。いざという時に役立つ物事を楽しみながら学べることができ、建設業の仕事とも密接に関わる。非常に良い試みだ」
 「こうした取り組みを通じて、建設業が抱えている使命を地域の人に分かってもらうことが重要。これまでは、世の中に役立つことをやっていれば目立たなくてもいいと考えていた面がある。そろそろ自分たちから発信しなくてはいけない」
 「建設業は非常時だけでなく平時も地域を守っている。良質な社会資本を提供することは、地域を守ることに他ならない。地域の良きホームドクターとなるためには、地域に精通していなくてはならない。普段の仕事を通してノウハウを身につけていく必要がある。地域をもっと知ることが必要だ。それらを建設業協会などで蓄積すれば、地域にとって貴重な財産となるだろう」
提供:建通新聞社