建設業情報管理センター(CIIC)と建設業技術者センター(CE財団)が共同設置した「地域建設業のあり方検討委員会」(座長・井出多加子成蹊大学教授)は、地域建設業の再生に向けた提言をまとめた。この中では、地域にとって必要な建設業に対する適切な評価が必要と指摘。具体的には、@必要な機材、人員を確保できるA地域の災害履歴や危険度について知見を持つB大規模災害発生時に地域でリーダーシップを発揮できる―といった企業に高い評価を与えるべきとした。
この委員会は、地域ごとの建設産業の特徴を踏まえた地域建設産業の在り方を探る目的で、2010年に設置された(研究委託先・建設経済研究所)。11年度は北海道と香川県をモデル地域に位置付け、入札契約制度や新分野進出などの課題を検証した上で提言につなげた。
提言では、地域建設業の現状について▽震災からの復旧・復興需要はあるものの、全国的な受注環境はこれまで以上に厳しい▽建設投資の減少との比較では施工業者数がさほど減っていない▽建設業への新規学卒者の入職率が落ち込んでいる―といった問題点を列挙した。
他方、東日本大震災では、地域建設業がいち早く現場に到達して的確に対応したことなどに触れ、「地域を守り、創造していく強い使命感を地域の建設企業は有し、命がけで地域を守っていることを忘れてはならない」と強調。災害対応以外の地域づくりにも大きな役割を果たしていることをあらためて指摘した。
こうした点を踏まえ提言は、地域の維持管理が将来にわたり持続的に行われるよう、入札契約制度でも担い手確保に役立つ工夫が必要とした。具体的な取り組みとしては、国土交通省が運用を始めた地域維持型契約方式(地域JV、包括発注、複数年契約など)や、新潟県・長崎県など地方自治体で運用されている地域維持型の入札制度などを挙げた。
さらに、技術者の実績などの情報が開示されることを前提に、地域にとって必要な建設企業に対する適切な評価が必要と指摘。特に「地域社会の存続に必要な技術者や機材などを恒常的に確保している企業が有利となるような評価の仕組みがより重要となる」点に言及した。企業評価に当たっては、明確な基準や客観性、透明性が重要とした。
建設業の新分野進出をめぐっては、北海道や香川県への現地視察などの結果を踏まえ、▽新分野進出後の事業継続を含めた支援▽金融業・不動産業との連携による新たなノウハウの取得・蓄積や、優れた新事業展開への資金調達を可能とする施策―などを提案した。
提供:建通新聞社