国土交通省の「社会保険未加入対策の具体化に関する検討会」は23日の会合で、行政と業界が一体となって社会保険加入を徹底していくための提言をまとめた。2012年度から16年度までの5年間を▽周知啓発重点期間▽加入指導重点期間▽保険加入者優先期間―の3段階に分けて徐々に指導を強化していく方針を提示。指導・通報しても加入しない企業は、営業停止など監督処分の対象となる可能性がある。17年度以降は、未加入事業者とは契約せず、未加入の作業員の現場入場を認めない体制の構築を目指す。
建設業の社会保険未加入対策は、建設産業戦略会議の「建設産業の再生と発展のための方策2011」で打ち出された。これを踏まえ国交省は5年後をめどに保険加入率を企業単位(建設業許可業者)で100%、個人単位で製造業並みに引き上げる目標を掲げ、その達成に向けた方策を探ってきた。
今回、検討会がまとめた提言では、行政、元請け、下請けなど各主体の役割を明確化した。未加入対策の推進体制として、建設業担当部局、社会保険担当部局、建設業団体などで構成する「保険未加入対策推進協議会」を今春にも設置する。都道府県単位での協議会も設け、情報共有などに取り組む。
協議会に参画する建設業団体には、保険加入状況や対策を盛り込んだ「社会保険加入促進計画」の策定を求める。この計画では、会員企業や下請けの保険加入状況に加え、保険加入に向けた▽普及啓発策▽法定福利費の確保策▽重層下請け構造の是正策▽ダンピング対策▽一人親方対策―などを明示してもらう。
行政は建設業許可・更新時などの機会をとらえ、未加入企業には文書で加入を指導し、一定期間後に加入状況の報告を求める。指導しても未加入の場合は保険担当部局に通報。それでもなお加入しない企業は営業停止など監督処分の対象とする。重点指導対象を絞り込みつつ立入検査などの指導を徹底するほか、経営事項審査(経審)で保険未加入企業の減点幅を広げる。
元請けは、下請けの保険加入状況を確認した上で、未加入者には保険加入を指導し、下請けが是正しない場合には、国交省や都道府県に通報する。下請けの選定に当たっては、保険加入企業の積極的な活用を進め、17年度以降は未加入の下請けと契約せず、未加入作業員を入場させない。
下請けは、元請けからの指導が再下請けなどに伝わるよう協力する。また、専門工事業団体は、見積もり時に法定福利費の内訳が明示できる標準見積書を作成し、その周知・普及を図っていく。
提供:建通新聞社