国土交通省は、下請けなどの連鎖倒産防止を目的とする「下請債権保全支援事業」や、元請けの資金繰り支援策である「地域建設業経営強化融資制度」の運用期限を1年延長し、2013年3月31日までにすることを決めた。下請債権保全支援事業では、東日本大震災で被災した建設業に対する建設機械のリース・レンタル・割賦販売の債権を保証対象に追加する。大震災で建機を失った建設業が、新たに建機を調達しやすくする狙いがあり、1月16日から運用を始める。
下請債権保全支援事業は、下請けなどが持つ売掛債権の支払いについて、国がファクタリング(債権買い取り)会社に対し保証料の一部を助成するとともに、元請けが倒産した場合でも下請け代金などの債権を保全する仕組み。地域建設業経営強化融資制度は、公共工事請負代金債権を流動化させることで、それを担保に工事完了前の融資が受けられるようになる。
国交省が両制度の延長を決めたのは、地域社会の維持に大きな役割を果たす地域建設業の経営を安定化させるためだ。こうした観点から、運用期限は12年3月31日から13年3月31日までと改めた。
また、東日本大震災に伴う大津波では、沿岸部で多くの建機が流出するなどの被害が出たが、被災した建設業の中には信用力などの問題から新たな建機の確保が困難となっているところもある。
このため、下請債権保全支援事業の保証対象に被災した建設業に対する建設機械のリースなどに関する債権を追加し、国が信用力を補完することにした。建設機械のリース・レンタル・割賦販売を業として10年以上継続している企業がファクタリング(債権買取)会社から保証を受けることができる。
保証対象となる債権は@資本・出資総額が20億円以下、または従業員数が1500人以下の中小・中堅建設業者A被災地に本店がある、または被災地で建機が流失、滅失、損壊などの損害を受けたB経審受審企業、または公共事業の受注実績(下請けとしての実績を含む)を持つ―の3要件をすべて満たす建設業に対するリース・レンタル・割賦販売の債権を想定している。
リース会社などがこの制度を利用すれば、二重ローンなどを抱え信用力に不安がある被災建設業から新たな契約の申し出があった場合でも、契約を結びやすくなる。建設業にとっては、例えば、1000万円のパワーショベルを5年間リースで契約する場合(リース料・月額約18万7000円)、信用力に不安があっても月額約1万2000円の追加負担(総計・約19万9000円)で建機の調達が可能となるという。
提供:建通新聞社