建設作業員の経歴・資格などをICカードで一元管理する「就労履歴管理制度」の構築に向け、一般社団法人就労履歴登録機構(代表理事・蟹澤宏剛芝浦工業大学教授)が発足した。同制度は、建設作業員情報の一元化や「見える化」により、流動性が高く技能・経歴を証明しにくい建設労働市場で、建設作業員の処遇を改善する。社会保険の加入確認、退職金制度の運用補助などへの活用も期待されている。
就労履歴管理制度は、建設作業員が携帯する就労履歴カード(建設共通パス)で建設現場の入退場管理を行い、作業員の就労履歴情報を収集し、この情報をデータベースで一元的に蓄積・保管する仕組み。データベースに蓄積した情報は、作業員、作業員を雇用する専門工事業者、元請け業者が権限に応じて閲覧・利用できる。英国や韓国など海外には、同様の仕組みを取り入れている事例がある。
同制度の実現に向けては、07年度に大手ゼネコンなどが「建設共通パス」としてシステム開発をスタートし、10年度に協議会を立ち上げた。就労履歴登録機構は、この協議会を母体に発足。制度運用時には、就労履歴情報を蓄積したデータベース管理などの役割を担う。
機構設立時の加入企業は▽大林組▽鹿島▽清水建設▽大成建設▽竹中工務店▽三井住友建設▽大和ハウス工業▽戸田建設▽西松建設―の9社。
建設労働市場は、雇用関係が流動的で技能・経歴を証明しにくいが、同制度で就労履歴を正確に管理することで、建設作業員の技能の適正な評価や処遇改善などが容易になる。
また、建設作業員の社会保険未加入問題についても、保険の加入情報を登録し、現場に入場する作業員の保険加入の状況をチェックする際に活用しようという動きもある。ことし6月には、宮城県石巻市の応急仮設住宅建設工事に先行導入しており、新規入職者の増加で労働災害が増加している東日本大震災の復旧・復興事業での活用も働き掛ける。
機構では、より多くの企業に参加を求めるほか、企業・作業員のコスト負担、技能者データベースなど他システムとの連携などの課題を解決し、本格運用につなげる考えでいる。
提供:建通新聞社