国土交通省の「高速道路のあり方検討有識者委員会」(寺島実郎座長)は9日、今後の高速道路の在り方に関する中間報告をまとめ、前田武志国交相に提出した。高速道路ネットワーク(NW)をめぐっては、▽環状道路整備をはじめとした大都市・ブロック中心都市でのネットワーク強化▽地域の耐災性を高め国土を保全するためのネットワーク機能の早期確保―を最優先課題と位置付けた。整備に要する費用負担の方向性として、大都市部は有料整備、地方部は税負担による無料整備を原則化すべきと指摘。料金制度は対距離別性を基本とすることなどを求めた。
この委員会は、高速道路の整備、管理、料金などの在り方を検討するため、11年4月に設置された。7月には緊急提言として、高速道路分野での東日本大震災への対応方針などを示した。
今回の中間報告では、今後の高速道路の在り方に関する基本思想として、@強くしなやかで国際競争力ある21世紀日本の形成A総合的な交通体系の中での道路システムの最適化B持続可能なシステムに向けた公正な負担の実現―の3項目を掲げた。
高速道路NWの構築に当たっては、明確なプライオリティ(優先順位)に基づく戦略的な整備の必要性を指摘。その上で、「大都市圏・ブロック中心都市でのネットワークの緊急強化」と「ぜい弱な地域の耐災性を高め国土を保全するネットワーク機能の早期確保」を最優先課題に位置付けた。
大都市圏などでのネットワーク強化に向けた具体的な取り組みとしては、環状道路など飛躍的にネットワーク機能を高める抜本的対策の加速や、中央道小仏トンネルなど「渋滞の名所」とされるボトルネック箇所への集中的対策などを例示。国土を保全するネットワーク機能確保に向けては、走行性の高い国土の活用や完成2車線の活用(追い越し車線や災害などを考慮した幅員の確保)、簡易なインターチェンジ(IC)の設置、避難場所など防災機能の付加といった方向性を示した。
整備・管理に要する費用負担の在り方にも言及。地方部のミッシングリングは税負担による無料での整備を基本とする一方、大都市部の高速道路は利用者負担による有料道路方式での整備を原則とする。ただし、利用者負担だけでは足りない分については、事業主体の責任を明確にしつつ、税負担も活用するべきとした。
高速道路会社の管理区間で車線増設やICの増設といった既設道路の機能を強化する際には、利用者負担を基本とする。また、都市高速を更新する際には、まちづくりと一体化するなど思い切った計画を検討するよう求めた。
今後の料金制度の在り方としては、対距離性を基本としながら、安定的でシンプルな制度を構築すべきと指摘。大都市部などを中心とした有料道路利用をETC車に限定する考え方も盛り込んだ。
提供:建通新聞社