政府の行政刷新会議は22日、中長期的な公共事業のあり方をテーマに行った提言型政策仕分けで、新規投資を厳しく抑制した上で、社会資本ストックの維持管理・更新を「選択と集中の考え方をより厳格に進めるべき」との評価結果をまとめた。また、将来的な維持管理・更新費の推計を地方自治体分も含めて正確に把握する必要性が指摘され「公共投資の全体像について一層の説明責任を果たす」よう求めた。
国の公債残高は年々増加し、11年度末までに税収の約16年分に当たる667兆円に上る見込み。これに伴い11年度の公共事業関係費は、ピーク時の1997年度に比べ半分の4兆9743億円(いずれも当初予算ベース)にまで減少した。
一方、国土交通省が推計した今後の社会資本(道路、港湾、空港、下水道など、国交省所管分)の維持管理・更新費は、2060年までの間で約190兆円とされている。投資可能総額の水準を横ばいとしても37年時点で維持管理・更新費をカバーできなくなる可能性があるという。
22日の仕分けでは、公共事業費の削減、既存インフラの老朽化という課題を抱える、中長期的な公共事業のあり方を議論した。国交省は、維持管理・更新費を圧縮するため、既存インフラの長寿命化計画の策定事業などの取り組みを説明。この中で、地方自治体が管理する施設で計画策定が進んでいない状況を課題に挙げた。
評価人からは「橋梁の約9割は自治体が管理している。この部分を徹底して調査するべき」「社会資本整備の棚卸をしなくてはならない。既存インフラのB/Cを総点検しなければ、本来のコスト縮減はできない」「国交省が主体となり、自治体分についても一定の期間で集中的に調査を進めてもよい」などの意見が挙がった。
また、今後の建設国債制度にも「意思表示のできない将来世代に負担を回してもいいのか」と指摘が及んだ。
仕分けの評価結果では「公共事業について現状では持続可能性がない」との前提が示された上で「新規投資は厳しく抑制していき、選択と集中の考え方をより厳格に進めるべき」とされた。増加する維持管理・更新費への対応については、公共事業の全体像を自治体分も含めて把握するよう求め、財源として民間資金を一層活用することも要求した。
提供:建通新聞社