国土交通省と農林水産省の「海岸における津波対策検討委員会」は、東日本大震災で被災した海岸堤防の復旧に関する基本的な考え方をまとめた。海岸堤防の津波高を超えて越流した場合に、施設の破壊・倒壊までの時間を少しでも長くする「粘り強い構造」を実現するため、裏法尻部に保護工を設置したり、天端保護工などの部材厚を確保するなど、設計時の構造上の工夫を具体例として提示した。
国交省と農水省は、同委員会での議論をベースに、設計津波の水位の設定方法について、過去に発生した津波の高さを整理し、数十年から百数十年に一度程度の頻度で発生する津波が到達する高さを想定し、その高さを基準に堤防の設計を行うよう、既に7月に海岸管理者に通知している。 同委員会では、今回の基本的な考え方の中で、被災状況を踏まえた海岸堤防の構造の在り方についても明示。中央防災会議の専門調査会が9月の提言に盛り込んだ「粘り強い構造」を実現するための手法を示した。
具体的には、裏法尻部の洗掘を防止するための保護工の設置や裏法の緩勾配化のほか、天端保護工などの流出を防ぐ部材厚の確保や部材間の連結などの対策を提示。波返工の倒壊などを防ぐため、天端まで盛土構造とする工法の検討や波返工に配筋による補強を施すなどの工法も推奨している。
また、設計時の耐震対策として、地震発生後の液状化や地盤沈下で天端高が不足しないよう、沈下や液状化の予測量を天端高に加えるなどの対策も考えられるとした。
被災地では、既に災害査定などが済み、復旧工事の設計を始めた海岸堤防もあり、国交省と農水省では今回の同委員会の提言を設計に反映するよう求める方針だ。
提供:建通新聞社