国土交通省は8日、「津波防災地域づくりに係る技術検討会」の初会合を開き、津波防災地域づくりの技術的な検討に着手した。建築物に衝突する津波の水位上昇を見越した基準水位の設定方法を定めるとともに、津波防護施設の技術基準や特別警戒区域での一定の開発行為の許可基準を明確化する。12月までに成果をまとめる方針だ。
津波防災地域づくりをめぐっては、東日本大震災の津波で甚大な被害が生じた教訓を踏まえ、津波に強い地域づくりを全国で推進する観点から、津波防災地域づくり法案が今臨時国会に提出された。国土交通相が策定する津波防災地域づくりに関する基本指針を踏まえ、都道府県知事が津波浸水の恐れがある地域や水深を設定。その上で、特に危険性が高い地域を「津波災害特別警戒区域」に指定し、同区域内で学校や社会福祉施設、医療施設などを建設しようとする場合(特定開発行為)、一定の基準を満たすことを義務付ける仕組みを創設する。
今回の検討会では、法案成立後にこうした枠組みを迅速・円滑に運用するため、技術的な事項を整理する。検討事項は@津波のせき上げ高の評価手法A特定開発行為の許可基準B津波防護施設の技術基準―などを想定している。
津波のせき上げとは、建築物に津波が衝突した際に水位が上昇することで、これを考慮して基準水位を設定する。特定開発行為では、津波に対する構造上の安全性を確保するとともに、居室の床を基準水位以上にする必要が出てくる。このため、基準水位の算定方法などを具体化していく。
また、特定開発行為の許可基準の検討に当たっては、学校など対象建物の地盤部分となる盛土・切土について、擁壁の設置など安全上必要な措置を明示する。その際には、民間開発業者にとって過度の負担とならないよう、必要最低限の基準とする。
津波防護施設は、津波災害の防止・軽減に役立つ盛土構造物(二線堤の機能を持つ道路、鉄道など)を指す。検討会では、津波による浸水を確実に防止するための構造上の技術基準を明確化する。
提供:建通新聞社