厚生労働省は「災害拠点病院のあり方検討会」(座長、大友康裕東京医科歯科大学教授)での検討を踏まえ、災害拠点病院の指定要件の見直し(案)を固めた。東日本大震災の教訓を踏まえ、災害医療を提供する拠点病院の耐震化を促進する。3次医療圏(都道府県ごと)に設置している基幹災害拠点病院については「病院機能を維持するために必要なすべての施設が耐震構造を有すること」とし、2次医療圏ごとに原則1カ所設置している地域災害拠点病院については「診療機能を有する施設が耐震構造を有すること」を要件とする。
検討会では、災害発生時に被災地の傷病者を受け入れる災害拠点病院は「すべての施設を耐震化することが望ましい」との考えで委員の意見が一致。ただ、施設の耐震化には時間と建設コストがかるため、各都道府県の災害医療の中核となる基幹災害拠点病院の耐震化を優先することとした。
地域災害拠点病院については、医療機関の負担を低減して耐震化を加速する必要があると判断。「診療機能を有する施設」のみ耐震構造を有することを要件とする。
このほか、通信・電気・水と、ヘリポートの確保についても指定要件も見直す。
通信手段については、広域災害・救急医療情報システム(EMIS)を活用できる医療環境づくりを前提とし、最低限、衛星回線インターネットが利用できる環境整備を求め、MCA無線を含めた複数の通信手段の保有を奨める。
また、医療機能を発揮するためには発電容量の確保が必要なことから、通常時の6割ていどの受電容量を持つ自家発電の保有を義務付ける一方、断水に備え、停電時でも使用可能な井戸設備の整備を求める。
ヘリポートは、現行の指定要件でも原則として病院敷地内に有することとされているが、災害拠点病院の中には用地を確保できなかったり、屋上などにスペースを確保できない病院もある。このため新しい指定要件では、基幹災害拠点病院のみ病院敷地内にヘリポートを有することとし、設置が困難な場合は病院近隣にスペースを確保することを要請する。
災害拠点病院は、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、災害発生時の初期救急医療体制を強化することを目的として1996年から整備が開始された。
基幹災害拠点病院は各都道府県の3次医療圏(都道府県ごと)に、地域災害拠点病院は、それぞれの都道府県の医療保健計画で定めている2次医療圏ごとに原則1カ所指定することとされており、2011年7月8日現在、全国で基幹災害拠点病院57、地域災害拠点病院564を合わせた618病院が災害拠点病院に指定されている。
同省が東日本大震災の発生を受けて実施した病院の防災対策に関する実態調査によると、2011年7月8日現在、災害拠点病院の耐震化率は58・9%(暫定値)。同省が実施した05年度調査時点の耐震率43・2%を上回っているとはいえ、依然として病院施設の耐震化は災害拠点病院全体の6割ていどにとどまっている。
提供:建通新聞社