国土交通省は、施工段階での検査頻度を増やして品質向上につなげる「施工プロセスを通じた検査」の適用を中小規模工事に拡大するため、施工者自らが品質確保に努める仕組みを新たに導入することを決めた。これまで発注者が担っていた出来形や品質の検査について、施工者の管理状況を確認する手法に改める。工事実施状況の検査は引き続き発注者が行うが、検査内容などは効率化する。こうした考え方を26日の「直轄事業における公共事業の品質確保の促進に関する懇談会・生産性向上部会」に示した。
施工プロセス検査は、工種・工程・現場状況に応じた適切な施工プロセスのチェックや段階検査などを重ねることで工事の品質を高める仕組み。比較的大規模で工期が長い工事を対象として、2010年度までに計160件の試行実績があり、11年度は新規88件、継続56件の試行を計画している。
受注者にとっては、検査を受ける準備作業の平準化▽完成検査での修補や不合格などのリスクの軽減▽出来高に応じて請負代金の支払いを受けることが可能な「出来高部分払方式」の併用によるキャッシュフロー改善―といった効果が期待される。その一方で、試行工事を対象としたアンケート調査では、受発注者ともに業務の負担の増加を指摘する意見が数多く寄せられた。
こうした指摘を踏まえ国交省は、施工プロセス検査を中小規模工事まで拡大するには、実施方法を効率化・簡素化するとともに、品質確保の役割分担を再構築する必要があると判断した。
見直しに当たっては、発注者が検査に用いる「施工プロセスチェックシート」を簡素化するとともに、既済部分検査・完成検査を効率化する。また、発注者による検査のうち出来形や品質について、施工者自らが品質管理を実施した上で管理状況を発注者に報告する仕組みを導入。施工者による品質管理には、「施工プロセスチェックシート」と同程度の確認を求める。施工体制や出来栄えといった技術検査は、これまでと同様に発注者が担い、成績評定などに反映させる。
提供:建通新聞社