農林水産省は、東日本大震災からの復興を見据え、新たな土地改良長期計画を年内に策定する。被災地で津波被害を受けた農地の土地改良や再生可能エネルギーの利用促進などに加え、大規模地震を想定した土地改良施設の耐震化や農業水利施設の老朽化などの全国的な課題への対応も盛り込む。新たな長期計画は策定時期を1年前倒し、2012年度から5年間を対象期間とする。
同省では、22日に開いた「食料・農業・農村政策審議会農業農村振興整備部会」(部会長・佐藤洋平東京大学名誉教授)に長期計画の策定を諮問した。12月中旬に同部会が答申をまとめ、年内をめどに新たな長期計画が閣議決定される見込みだ。
東日本大震災の農地・農業用施設などの被害額は7137億円に上る。22日の部会では、津波被害を受けた農地の復興に向けて、住宅地から農地への転用、宅地利用を含めた土地利用調整など、従来の土地改良事業とは異なる仕組みを検討する必要があることが報告された。
電力不足を補うエネルギーの地産地消の観点から、再生可能エネルギーの利用促進も計画に位置付ける。震災で発生した木質系廃棄物を活用したバイオマス発電、農業用水を活用した小水力発電、耕作放棄地への太陽光発電などにより、エネルギー自立型システムを構築できるよう具体策を検討する。
震災復興の関連政策に加え、全国的な農業農村整備における課題についても対応を盛り込む。東海・東南海・南海地震の被害想定範囲内に、全国の農業水利ストックの約2割があることを踏まえ、農業水利施設やため池の耐震対策を推進する。 農業水利施設については、標準耐用年数を超過した施設が現在の17%から10年後に31%まで増加する見込み。従来の全面改築・更新の手法から戦略的な保全管理へと転換する必要がある。
提供:建通新聞社