国土交通省の「今後の土砂災害対策を考える会」(座長・丸井英明新潟大学教授)は11日、東日本大震災を踏まえた土砂災害対策の方向性を固めた。ここでは、災害時要援護者関連施設について、多数の入所者を収容する施設や緊急避難が困難な1階建ての施設などを優先的に保全するとともに、土砂災害の恐れがある個所への新規立地を抑制する考え方などを示した。
今回の会合では、保全対象が人家5戸以上の土砂災害危険個所に限っても整備水準が20%にとどまっている実態などを踏まえ、「短期間にすべての危険個所に対する施設整備を行うことは現実的に極めて困難」との認識を提示。このため、大規模土砂災害に対しては、最低限人命を守るという考えに立ちながら、施設整備による一定規模の災害への対応を基本とした上で、それを上回る事態を想定し、ハード・ソフト両面での対策を国が主導して重点的に進めていく必要性を指摘した。
土砂災害対策での主要施策としては、大規模な土砂流出などによる国民生活への深刻な影響を回避・軽減するため、中期的な整備目標を設定した上で着実に事業を実施していくことを明記。加えて、当面の整備目標や進ちょく状況、事業効果などを分かりやすく情報提供すべきとした。また、既存ストックの機能を長期間にわたり発揮させるため、計画的な施設の改築・補修を徹底するとともに、ライフサイクルコストを考慮した合理的な施設設計を推進していく考えを盛り込んだ。
高齢化の進展に合わせ、災害時要介護者関連施設については、施設の規模や構造に着目し、より避難が困難と見込まれる施設を重点的に保全すべきとした。
環境負荷を低減する観点から、砂防関係施設を活用した小水力発電や、間伐材の対策工事への活用などを促進することも提起した。
東日本大震災への対応をめぐっては、強い揺れを複数回観測するなど地盤の緩みが想定される地域で緊急的な土砂対策を集中的に推進。今後の大規模地震への備えとしては、重要交通網や生活インフラ、地域防災拠点、避難場所などの保全を重点的・戦略的に進めていく方針だ。
提供:建通新聞社