国土交通省の「高速道路のあり方検討有識者委員会」(座長・寺島実郎日本総合研究所理事長)は14日、東日本大震災を踏まえた高速道路政策の在り方について緊急提言をまとめ、大畠章宏国交相に提出した。被災地域の早期復興を促進するため、「復興高速道路」として位置付けられる三陸沿岸道路などの太平洋沿岸軸と、太平洋沿岸と内陸部を結ぶ横断軸の強化に向けて、必要な高速道路は計画を前倒しして着工・推進する必要性を指摘。首都直下地震、東海・東南海・南海地震などの大震災が想定される地域を中心に、災害面からの弱点を再点検し、必要な個所を重点的に強化するよう求めた。
この委員会は、高速道路の整備、管理、料金などの在り方を検討するため、本年4月に設置された。緊急提言は第3次補正予算の編成を見据え、高速道路分野での当面必要な震災への対応方策をまとめたもの。全国の高速道路ネットワーク(NW)整備や料金制度に関する最終報告は今秋にまとめる方針だ。
今回の緊急提言では、東日本大震災の被災地を早期に復旧・復興するとともに、大震災が想定される地域の安全を確保するため、これまでの「防災対策」に加え「減災対策」を取り入れた二段構えの耐災思想で取り組むべきとした。
今後の高速道路NWについては、地域の孤立化や多重性の欠如など災害面からの弱点を再点検した上で、ミッシングリンクの解消や隘路(あいろ)区間の改良など効果的な手法を選択し、緊急性の高い個所から重点的に強化することが必要とした。その際には、国際物流の動きを踏まえつつ、太平洋側と日本海側を結ぶネットワークの強化に取り組むこととした。
また、災害に強い地域づくりに当たっては、道路の防災機能を意識して、高速道路と防災拠点や避難場所を一体的に整備するなど、他施設との積極的な連携が必要と指摘。特に、高速道路のインターチェンジやサービスエリア・パーキングエリアなどを中心に、道路と周辺空間を災害時に計画的・積極的に活用すべきとした。
このほか、▽盛土の耐震性向上や液状化対策などに必要な基準整備の推進▽災害時の地域孤立化などを防ぐ考え方を取り入れた事業評価の充実―なども盛り込んだ。
提供:建通新聞社