国土交通省の社会資本整備審議会・交通政策審議会交通体系分科会の計画部会は6日、東日本大震災の教訓を踏まえた提言「津波防災まちづくりの考え方」を合同でまとめ、同日付で大畠章宏国交相に提出した。従来の海岸保全施設などの「線」による防御から、河川・道路や土地利用規制などを組み合わせたまちづくりの中での「面」による津波防災・減災対策の必要性を指摘。国交省は提言を受けて、新たな法制度などの検討を本格化させる。
提言は、津波防災まちづくりに関する法制度や財政措置の在り方を検討するため、大畠国交相が検討を求めていたもの。基本的な考え方として、▽大規模な津波災害が発生した場合でも、人命を守るという考え方に基づき、ハード・ソフト施策の適切な組み合わせにより、減災のための対策を実施する▽海岸保全施設などの構造物による防災については、比較的頻度の高い一定程度の津波レベルを想定して、人命、財産、産業・経済活動を守り、国土を保全することを目標とする―などを掲げた。
国の役割については、津波災害に強いまちづくりの推進を国の政策として確実に実施するため、制度的な基盤を整備するとともに、その基本的な指針を地方の実情を踏まえつつ国が定めるべきと指摘。地域ごとの津波防災まちづくりの実施は市町村が主体となるものの、技術的な面については都道府県とともに国が積極的に支援することとした。
土地利用・建築構造規制のうち建築制限については、建築基準法に基づく災害危険区域制度の活用を提案。その一方で、土砂災害防止法のスキームを参考にした新たな制度の導入も検討すべきとした。土地利用規制は、一律的な規制ではなく、立地場所の津波に対する安全度などを踏まえたものとし、津波防災施設などの整備状況に応じて規制の解除や制限緩和も可能とするよう求めた。
津波防災施設の整備に当たっては、海岸保全施設や港湾施設などによる防御に加え、例えば二線堤(浸水拡大防止機能を持つ道路などの盛土)、宅地、公共施設の盛土などを「津波防護施設」(仮称)と位置付け活用すべきとした。
こうした施策を国と地方公共団体が連携して推進していくため、津波防災・減災の事業・施策をまちづくりと一体となって実施することが可能となるような仕組みの創設を提案。具体的には、津波防災・減災に関する多様な事業・施策を、地域の特性、風土、実情に応じて選択し、地方公共団体の計画に位置付けることなどを盛り込んだ。
提供:建通新聞社