国土交通省は14日、東日本大震災の復旧・復興に向けた対応方針を公表した。津波などによって甚大な被害を受けた被災地の復旧・復興に当たり、ハードとソフトの施策を組み合わせた「多重防御」の考え方を取り入れ、「津波防災まちづくり」を推進するための制度を創設する方針を提示。具体的には、海岸堤防や市街地などの復旧・整備とともに、避難路・避難場所、地形などの状況に応じた土地利用や建築規制に取り組む。復興事業の円滑化に向けて、農地と宅地の土地利用調整などをワンストップ化する仕組みも整える。こうした考え方を関係法制などに反映させる。
今回の対応方針は、応急復旧から本格的な復旧・復興への移行を控える中で、国交省の考え方を明確化することが狙い。@新たな発想による復興まちづくりA災害に強い国土構造への再構築B被災者の生活再建と安定C地域産業・経済の再生とそれを支える都市・交通基盤―という四つの視点から、施策の方向性を示した。
被災地の復旧・復興に向けては、従来のハード対策では大規模津波から守りきれない地域があることが明らかとなったため、ハード・ソフトの施策を総合した「津波防災まちづくり」を推進する。主な施策例としては、▽海岸堤防などの復旧・整備▽市街地の整備・集団移転・津波対策の確保▽必要な区域での建築制限などの実施―などを盛り込んだ。
縦割りを排除した市街地と農地の一体的な土地利用調整の必要性にも言及。既存の土地利用計画(都市計画・農業振興地域整備計画など)の効力停止や許認可手続きのワンストップ化、住宅と農地を一体的に再編する土地区画整理事業などを検討する。
災害に強い国土構造への再構築に当たっても、ハード・ソフト両面から、災害への対応力が高い強靱(きょうじん)でしなやかな国土の形成を目指す。このため、▽災害の防止・軽減のためのインフラ整備▽公共施設、住宅などの耐震化▽官庁施設の防災機能強化▽液状化対策の推進▽国土全体での機能分担・配置の検討―などに取り組む。災害対応など地域社会の維持に不可欠な地域建設業の再生も明記した。
被災者の生活再建と安定に向けては、災害公営住宅の供給や高齢者・地域コミュニティーに配慮した生活支援施設の整備などを推進。地域産業・経済を再生させる観点から、三陸縦貫道など被災地の再生に必要な復興道路・復興支援道路の緊急整備や、地震・津波に強い港湾整備などを進めていく。
提供:建通新聞社