2011年度の建設投資(名目値)は、前年度に比べ8・3%増の42兆2500億円になる見通しであることが、建設経済研究所などのまとめで分かった。東日本大震災の復旧に向けて、数次にわたる補正予算の編成が見込まれていることから、政府建設投資が大幅に増加すると予測。前回1月の調査時点から2兆0400億円を上方修正した。ただし、建設投資の総額は09年度とほぼ変わらず、92年のピーク時と比べると半分の水準に落ち込んでいる。
政府建設投資は、11年度当初予算で国の公共事業関係費の伸び率が6%減、地方単独事業費の伸び率が4・6%減となったことが減少要因として働く。
一方、3月11日に発生した東日本大震災の復旧・復興のため、11年度内に複数回の補正予算が編成されると予測し、その公共事業費の追加規模を5兆円程度と仮定。その結果、前年度比18・1%増の16兆6600億円になるとの見通しを示した。この推計には、仮設住宅の建設費用やガレキ処理の費用は含まれていないため、建設産業が関与する投資規模はさらに膨らむとみられる。
民間住宅投資は、大震災による着工中止や東日本を中心とした需要・供給マインドの悪化で11年度前半は停滞するものの、後半は着工を先送りした案件の再開と被災住宅の再建が相まって徐々に回復していくと予測。結果として、11年度の住宅着工戸数が3・8%増の85万2000戸、投資額が4・3%増の14兆4200億円になるとした。ただし、被災地域の復旧に伴う建設資材や労働者などの不足が制約要因になる可能性にも言及している。
民間非住宅建設投資については、実質民間企業設備投資が3四半期連続でプラスになるなど、持ち直しの動きを示していたものの、東日本大震災による被災や電力供給の制約により、需要や生産が停滞するとみた。このため、投資総額は0・7%増の11兆1700億円と横ばいで推移し、本格的な回復は12年度になるとした。
建設経済研究所は東日本大震災が経済に及ぼす影響について、「被害はいまも拡大しており、復旧・復興費が現在想定されている規模では不足する可能性がある。被災地の復旧・復興は日本経済にとっても喫緊の課題であり、必要な事業費の確保と迅速な執行が求められる」などと指摘している。
「建設経済モデルによる建設投資の見通し」は、建設経済研究所と経済調査会が四半期ごとにまとめて公表している。
提供:建通新聞社