厚生労働省は、被災地の実情を踏まえた復旧・復興工事従事者の労働安全衛生を担保するため、「東日本大震災復旧・復興工事安全プロジェクト」を立ち上げる。同省安全衛生部とスーパーゼネンコン、中小地場ゼネコン、専門工事業者らで構成する「震災復旧・復興工事安全推進本部」を5月中に設置する。被災地には関係発注機関と元方事業者らによる安全衛生協議体制を構築するなど、建設労働者らが安全に復旧・復興に従事できる環境整備を同省と建設業者が一体となって進めていく方針だ。
復旧・復興工事の本格化に伴って、輻輳(ふくそう)した現場で作業に従事する労働者などの労働災害の発生が懸念されるようになっている。このため「震災復旧・復興工事安全推進本部」を中心に行う労働安全衛生対策の検討には、被災地の実情を知る労務安全担当責任者からの情報や意見を反映させる。
被災地では、地理的な条件や工種などに基づいて区分けしたエリアごとに関係発注機関と元方事業者らによる安全衛生協議を実施。作業工程などの情報共有や隣接工区間の連絡調整を行う一方、資材搬入ルートの統一などについても実現の可能性を探る。
また、雇用対策により、未経験者が建設業に就職し、がれきの処理などに従事することも想定されることから、被災地での安全衛生教育の在り方や体制づくりについても検討する。
震災から1カ月半が経過し、被災地では生活と産業の再建に不可欠なインフラの早期復旧・復興が国家的な課題となっている。
一方で、膨大ながれきに潜むアスベストなどの有害物質の危険性も指摘されており、可動域の限られた被災地では、多様な工種の工事を同時併行的に行わざるを得ない危険な状況にある。
同省によると、1995年に発生した阪神・淡路大震災では、復旧工事中の労働災害によって40人が死亡、944人が死傷している。
提供:建通新聞社