厚生労働省は「国立病院・労災病院等の在り方を考える検討会(座長・相川直樹慶応義塾大学名誉教授)」を設置し、国立病院と労災病院の再編・整理に向けた検討を始めた。国立病院144病院と労災病院30病院(2分院)の公的病院としての存在理由や民間病院による医療提供の代替の可能性などについて検討し、2011年内をめどに結論を得たい考えだ。
今回の検討は、政府が10年12月に閣議決定した「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」の中で、「国立病院と労災病院については、両病院間の診療連携や地域の公的病院との再編などについても広く検討する」としたことを受けての対応。
ただ、国立病院と労災病院それぞれが提供している医療は、目的や性質が大きく異なるため、両者を同じテーブルに載せて整理・統合を検討することには、省内外に疑問の声がある。
国立病院は主として医師の確保が難しく、採算性に難のある筋ジストロフィーや重症心身障害などの政策医療を提供。労災病院は、アスベスト関連疾病などの労災疾病に関する知見を集積し、メンタルヘルスケアなどの労働をめぐる新たな課題にも対応している。
国立病院と労災病院の整理・統廃合は、すでに自民党政権時代からそれぞれで、厚生省(厚労省)が策定した再編計画に基づいて進められてきている。
国立病院については、旧厚生省が1986年に策定した再編成計画に基づいて病院の移譲・統廃合を実施してきた。計画がスタートした86年時点で全国に236病院あった病院数は、独立行政法人国立病院機構が事業主体となった04年度には149病院、09年度には144病院にまで減少。残る再編対象病院は1病院だけになっている。
一方、労災病院については厚労省が03年度に再編計画を策定。独立行政法人労働者健康福祉機構が事業主体となった時点で37あった病院は、5病院を廃止し、4病院を2病院に統合して08年度当初時点では30病院となっている。
提供:建通新聞社