国土交通省は東日本大震災への対応として、直轄事業で被災により施工できなくなった工事・業務や、災害応急対策を優先するために中断が必要と認められる工事・業務に一時中止を命令することを決めた。工事の一時中止に伴い発生する費用は「工事一時中止ガイドライン」に従って適切に支払う。また、全国の都道府県に対しても、施工中の公共工事について、必要に応じ一時中止を指示するよう要請。被災した施工中の工事・業務や災害応急対策工事の支払いを円滑化するためのルールも明確化した。
3月11日に発生した東日本大震災は、東日本に甚大な被害をもたらし、工事を施工できなくなったり、工事目的物に損害が生じたりする事態が数多く起こっている。また、当面の災害応急対策を最優先で実施することが求められている。
こうした状況を踏まえ国交省は直轄事業で受注者に対し▽施工できなくなった工事・業務▽当面の災害応急対策を優先して中断すべき工事・業務―を対象に一時停止命令を発することを決め、15日付で各地方整備局、北海道開発局、沖縄総合開発局に通達した。さらに翌16日、全国の都道府県・政令市に対し、建設会社が当面の災害応急復旧に全力を尽くせるよう、施工中の公共工事について、一時中止を指示するよう要請した。
施工できなくなった工事に対しては、工事契約書第20条第1項の「天災などにより工事目的物などに損害を生じ、または工事現場の状態が変動したため、受注者が工事を施工できないと認められる時は、発注者は受注者に工事の一時中止を命じなければならない」という規定を踏まえ、的確に一時中止命令を行うこととした。
当面の災害応急対策を優先して中断する工事・業務については、災害応急対策に建設機械、資機材の調達や技術者の確保など建設企業の協力が不可欠であるとの観点から、施工中の工事が被災していない場合でも、施工者の意向を踏まえ工事の一時中止を命令する。
また、被災した施工中の直轄工事・業務で出来高に対する支払いを円滑化するため、被災前の出来高について、工事では工事出来形内訳書と実施工程表付き工事履行報告書、業務では業務計画書・履行状況などの資料で確認できるようにした。
被災した工事、または被災は受けなかったが地震により受注者が影響を受けたため、年度内に完成する見込みがなくなった工事については、▽本年度の出来高分を本年度中に支払い、残りを繰り越す▽翌年度の完成時点で支払う―のいずれかを受注者との協議によって決定する。
さらに、災害応急復旧に取り組む建設会社の資金繰りを確保する観点から、請負契約の取り交わしが未了であっても、概算の見積額で前払い金を支払うよう、都道府県・政令市に要請。国交省によると「こうした措置は過去に例がない」という。併せて、前払金保証の事務手続きを迅速化・弾力化することなども決めた。
提供:建通新聞社