地域に必要な建設業の存続に向けて、行政は維持修繕業務などでの共同受注方式や、地域貢献度の高い企業に絞った発注方式などの活用を検討すべき―。こうした提言を、建設業情報管理センター(CIIC)と建設業技術者センター(CE財団)が共同設置した「建設業の経営分析・地域建設業のあり方検討委員会・地域建設産業サポート分科会」がまとめた。一方で過剰供給構造を是正する観点から、地域社会の維持に必要な建設業の条件を明示した上で、入札契約制度などで選別を進めていく必要性も指摘した。
この分科会は、地域ごとの建設産業の特徴を踏まえた地域建設産業の在り方に関する提言を策定する目的で、2010年7月に設置された。
提言は、地域建設業を「災害時はもちろん、平常時の生活基盤を守るためにも地域に必須の主体である」と位置付けた。その上で、「地域に本当に必要な、優秀で頼りになる建設企業の存続のため、企業の自助努力とともに、行政、業界をあげて対応を強めていく必要がある」とし、行政などが今後取り組むべき事項を示した。
この中では、災害や緊急補修などへの対応力を保持していく観点から▽経営事項審査や総合評価方式などで、地域貢献を一層高く評価する▽除雪を含む災害対応時の支払い対象経費について、待機費用も十分考慮し必要に応じて拡大する。その際には直接経費以外に一般管理費を含む間接経費も含める▽建設業が保有している資材・機材について、出動がなくても維持管理経費が賄える制度を導入する―ことなどを提起した。
また、一部の地域で運用している共同受注方式について「地域社会の存続に必要な企業の一企業当たり、一人当たりで仕事がない時期を減らすことができれば、人材が有効活用でき経営改善上のメリットが大きい」とし、今後の対応の参考にするよう求めた。
地方自治体の入札契約制度をめぐっては、国に対し「一定の客観性・透明性のある指名競争入札が合理的な場合については、厳格な説明責任を果たした上で、その運用体制を指導する」ことが必要と指摘。地域社会の存続に必要な地域貢献の意欲とその実施能力が高い企業の名簿を創設し、一部の建設工事を名簿に記載された業者に発注することや、人材育成に積極的な企業を存続させる政策を強めることなども求めた。
一方、建設業者数の過剰供給構造を踏まえた選別の必要性にも言及。「特に公共投資への依存度が高い地域などでは、建設企業の共倒れにより地域に必要な建設企業の倒産や廃業を防ぐため、必要な誘導策を実施する」ことを要請。地域社会の維持に必要な機能とそれを担う建設業の条件を明示した上で、入札契約制度に反映させる要素や支援対象の選別要件を検討する必要があるとした。建設業の合併については「過剰の改善策として直接的な方策であるため、引き続き行政が合併促進を支援していく」こととし、入札契約制度などで一層の優遇措置を講じるよう提案した。
提供:建通新聞社