高齢化と低賃金を背景に、建設投資の縮小を上回るペースで型枠大工の減少が進んでいた―。日本建設大工工事業協会(日建大協、三野輪賢二会長)の調査によると、2010年9月末時点での技能工の就業者は前年同期と比べ13%減少した。10年春から表面化している技能工不足をデータとして裏付けた格好だ。また50歳以上が44%を占めており、このまま推移すれば今後5年間に自然減だけでさらに17〜20%減少し、社会的ニーズに対応する技術水準の確保も難しくなるという。同協会では、人材面での危機を打開するため、低賃金の要因となっている元請けのダンピング受注の防止策などを国土交通省に求めるとともに、元請け業界団体に施工単価のアップなど改善を訴えていく方針だ。
非会員も含めて1次下請けレベルで調査を実施し報告書をまとめたもの。それによると、10年9月末時点の技能工の就業者数は8990人で、前年同期に比べ13%減少した。また、職長は2647人で、8%減少した。
技能工の減少は、特に東北地域(18%減)や北陸地域(24%減)で顕著だった。首都圏への型枠工の供給地であるこれらの地域で減少している場合、以前であれば出稼ぎなどで増加すると考えられた関東地域(13%減)でも減少が顕在化した。西日本では、四国地域(16%減)での減少が目立った。
建設業全体の近年の技能工の減少率は年間3〜4%程度だという。ほかの職種を大幅に上回る減少の要因について同協会は、08年9月のリーマン・ショック後のマンション建設の急減が影響したとみている。
マンション建設の減少は、元請けのダンピング受注を増加させ、マンションの施工単価を07年以降の約3年で50%近く暴落させたという。また、ダンピングはほかの建築物にも及び、施工難易度にかかわらず単価が約35〜40%下落した。
施工単価の下落は技能工の賃金の低下につながっている。今回の調査では、年間必要経費として見込まれる36万円を控除した実質年収は、最も高い関東地区の職長レベルで309万円、技能工で257万円だった。
年齢構成は、50歳以上が44%を占める一方、若年齢層の10〜20歳代は12%にとどまった。今後、技能工の高齢化が一層進み、生産性の悪化や技術水準の低下が危惧されるという。
三野輪会長は「こういった状態が続くと、型枠大工の技能という、建設産業の重要な部分が失われる」と指摘する。
報告書では若年齢層の減少の要因として@業界の3Kイメージの定着A低賃金重労働B正社員雇用に基づかない業界構造C技能工が技術者として評価されない実態―を挙げる。特に施工単価の暴落による急激な賃金低下が若年齢者の他産業への流出を招いたとみる。
同協会では3月上旬をめどに国交省と元請け業界団体に現状を伝え、改善を求める方針だ。
国土交通省に対しては、具体策として、元請けのダンピング防止策▽専門工事会社の技術・技能を評価する仕組みの構築―を示す考え。
ダンピング防止策では、最低制限価格制度の全公共工事への導入や、合理的で透明性のある最低制限価格設定のための見積もりの裏付け調査を提案する。技術・技能の評価では、登録基幹技能者の配置を全公共工事の施工条件にすることなどを求めていく。
また同協会では今後、3月末と9月末の年2回、技能工の実態を定期的に調査し、問題解決につなげていく。
提供:建通新聞社