国土交通省は、建設業の資金繰り対策として2008年11月から運用を始めた「地域建設業経営強化融資制度」の導入状況をまとめた。それによると10年12月末現在、全都道府県と19政令市では導入済みだったが、市区町村の導入率は3割にとどまっていた。ただし、未導入の市区町村の中には「地域の経済動向や地元業界からの問い合わせ・相談などを踏まえ、必要に応じて導入を検討する」との姿勢を示すところも多かったという。今回の調査結果を踏まえ国交省は、同制度の概要や導入効果を説明するマニュアルを作成し市区町村に配布するなど、導入拡大に向けた取り組みを展開していく。
地域建設業経営強化融資制度は、公共工事請負代金債権を流動化させることで、出来高を超える部分の融資を可能とする仕組み。10年12月末時点の実績は融資件数5708件、融資金額約1364億円となっている。
建設業者が同制度を活用するためには、公共工事などの各発注者が債権譲渡を承諾する必要がある。しかし、国交省が全地方公共団体を対象に調査したところ、市区町村での導入率は31%で残る約7割の市区町村発注工事では制度が利用できない現状にあることが分かった。
このため国交省は、市区町村の建設業・発注事務担当者に同制度を理解してもらうマニュアルを作成した。この中では、市区町村での導入のメリットとして▽中小・中堅建設業に対する新たな支援策を提供することが可能▽施工業者の資金調達を円滑化することで、工事の品質確保に役立つ▽自治体の財政負担が必要ない▽債権譲渡を認めることで制度導入が可能―といった点を挙げている。
また、マニュアル作成に先駆け、建設業者の相談窓口となる事業協同組合などに対し、制度の周知に向けた取り組みを推進するよう要請した。
提供:建通新聞社