国土交通省は、建設産業戦略の基本方針をまとめた。地域建設業を再生させる観点から、地域建設業が担う事業の安定的な確保や地域維持型契約方式の導入、地方公共団体でのダンピング対策強化などに取り組む。技能・技術の承継に向けて、社会保険未加入企業の排除や重層下請け構造の是正、技術者制度の見直しなどを打ち出した。過剰供給構造を是正するため、不良不適格業者の排除や企業再編・転業・廃業時の支援などにも乗り出す。こうした方針を実現するため、入札契約適正化法に基づく適正化指針をことし3月に見直すとともに、2012年の通常国会に建設業法などの改正案を提出する考えだ。
「建設産業の再生と発展のための方策に関する当面の基本方針」は、10年12月に設置した「建設産業戦略会議」(座長・大森文彦東洋大学教授)が議論してきたもので、馬淵澄夫国交相が7日の定例会見で正式に発表した。戦略会議は3月に中間報告、6月に最終報告をまとめる。
過剰供給構造にある建設産業がかつてない厳しい状況に直面していることを踏まえ、▽地域社会の維持に不可欠な建設企業の再生▽建設生産を支える技能・技術の承継の確保▽大手・中堅企業による技術力・事業企画力の発揮▽過剰供給構造の是正―という四つの視点から、今後取り組むべき方策を打ち出した。
建設業の再生に向けては、地域建設業が担うことが望ましい事業を従来に増して地域建設業に委ね、継続的な経営を可能とする方策を検討する。透明性を確保した地域維持型契約方式の導入や地方公共団体でのダンピング対策強化、国による新事業発掘などの支援を視野に入れている。
技能・技術を継承する観点からは、社会保険未加入による不適正な競争を是正し、施工力を持つ企業による人材確保・育成を推進する。このため、保険未加入企業の排除や重層下請け構造の是正、直接的・安定的に労働者を雇用する企業の重視、地方自治体などと連携した法令順守の強化に取り組む。また、技術者制度を大幅に見直す。
大手・中堅企業に対しては、海外市場や技術力・マネジメント力が発揮できる新たな事業分野への進出を支援する。具体的には、海外展開のためのリスク軽減策の導入▽CMの制度化などによる新たな国内市場の創設▽参加企業の絞り込みと企業の成長につながる技術力などを重視した契約方式の導入▽民間発注工事などでの建設業の立場の強化―などを想定している。
その一方、建設産業が直面する課題の根本原因は過剰供給構造にあるとみて、その是正にも着手する。市場への参入要件強化や不良不適格業者の排除に加え、企業再編・転業・廃業時の支援などを検討する。
こうした方策を実現するため、戦略会議の中間報告を受け入札契約適正化法に基づく適正化指針の改正を本年3月に閣議決定する見込み。また6月に戦略の全体像が提示された後、国交省が建設業法などの改正作業に着手する。改正案の提出は12年の通常国会を目指す。12年度予算概算要求・税制改正要望には、財政・金融上の支援措置を盛り込む方針だ。
提供:建通新聞社