国土交通省は、建築に関する基本理念などを明確化する「建築基本法」の制定に向けて、本格的な検討に着手する。有識者らで構成する検討会を2011年1月にも設置し、建築全体を網羅した法体系の在り方などを話し合う。建築基本法の制定が実現すれば、建築基準法や建築士法など建築関連法制の抜本改正につながる可能性がある。このため、建築確認審査の迅速化などに向けて見直しの議論を進めてきた建築基準法は、次期通常国会への改正案提出を見送り、当面は運用改善で対応していく。馬淵澄夫国土交通相が17日の会見で、こうした考えを表明した。
馬淵国交相は現行の建築関係法制について、「戦後まもなく制定された建築基準法などの関連法規は、量を確保するために最低基準からスタートした。これが建築全体を網羅する法律体系になっているか疑問だ」との認識を提示。その上で「理念などを含めた基本法の制定に踏み出し、これを前提に置いた関連法制の抜本的な見直しの検討が必要」と、建築基本法制定の必要性を強調した。検討スケジュールについては、「基本法のおよぶ枠組みが他省庁にまたがるような法案になるかを含めての議論となるため、一定の期限を区切るというより、広く議論する場を設定したい」と明言を避けた。
同省の「建築基準法の見直しに関する検討会」で審議してきた建築基準法の在り方をめぐっては、「検討会報告では見直しに積極的な意見と慎重な意見の両論が併記された。今後、建築基本法の議論と合わせて、十分に時間をかけて検討していく必要がある」と述べ、国交相就任時から表明していた次期通常国会への提出を見送り、法改正を伴わない運用改善で対応する考えを示した。
これを踏まえ国交省は、運用改善が可能な項目を本年度中に整理した上で、11年夏をめどに新たな運用改善策を施行する方向で検討を進めていく方針だ。
提供:建通新聞社