国土交通省の「建築基準法の見直しに関する検討会」(座長・深尾精一首都大学東京教授)は19日、建築基準法の見直しに向けた最終報告を大筋でまとめた。構造計算適合性判定(適判)の対象範囲をめぐっては、技術的な側面から対象範囲の在り方を精査する委員会を設けた上で、そこでの検討結果を踏まえて制度を見直すよう提言。建築確認審査の法定期間短縮や違反行為に対する罰則強化は、賛否両論を併記するにとどまった。また、手続きが長期化している大臣認定制度や、業務実態と資格制度が乖離(かいり)する設備設計などの取り扱いは継続的な検討課題に位置付けた。
この検討会は、▽適判の対象範囲▽建築確認審査の法定期間▽厳罰化―という三つの課題を中心に、建築基準法見直しの方向性を具体化するために設置された。
適判の対象範囲については、適判対象となる構造計算ルートを避けようと柱・壁が多い不経済な設計が増えているとの指摘を踏まえ、各構造計算ルートの審査の難易度に対応して対象外とすることが可能な範囲を精査するため、早急に技術的検討を行う委員会を設置するよう求めた。また、適判機関が自ら引き受けた建築確認の適判を可能とするワンストップ化をめぐっては、第三者性を確保するための体制・実施方法や、審査に必要な人員などを検証した上で判断することが望ましいとした。
エキスパンションジョイントで接続された複数部分から構成される建築物のうち、構造的に分離された部分を適判の対象外とするかどうかも今後検討していく必要があると指摘した。
建築確認検査の法定期間は、現行の上限70日を「短縮すべき」という意見と「短縮すべきでない」という意見を併記。その上で、本年6月から施行している運用改善後の実態を踏まえて検討していく方針を示した。違反行為に対する厳罰化についても、罰則強化に積極的な立場と慎重な立場の双方の見解を盛り込んだ。
このほか、▽工事監理・中間検査・完了検査を徹底する仕組みを構築すべき▽大臣認定制度の認定・計画変更手続きが長期化していることは問題であり、合理化すべき▽設備設計一級建築士制度で建築設備士を活用すべき▽建築設備士に設計・工事監理での一定の業務権限を付与すべき―といった課題についても引き続き検討が必要とした。
提供:建通新聞社